PA-350が流れ着きました。動作品で購入されたのですが、立ち上がらず当方に依頼いただきました。
末永く使いたいとのご希望、しっかりメンテナンスしたいと思います。
はじめに
初期タイプのPA-3x0シリーズは、黒アンプと呼ばれ、ファンが多いです。これら黒アンプシリーズは、カップリングコンデンサが装着しておらず、ストレートな音とかつ、ナカミチらしい柔らかな低歪の音が特徴です。
PA-350はこの小さなボディに4chx35Wを詰め込んでいるスグレモノ。
なかなかオークションでは良品をお目にかかることは少ないです。
一方、使用している電解コンデンサがPA-30x(シルバーモデル)よりもマージンがあるのか、液漏れをめったに見かけません。(制御系の小型電解コンデンサは、残念ながら液漏れの洗礼を受けてしまいます。)
状態
内部の状態を確認してみましょう。
底板を外し、基板を確認してみました。
良好で、液漏れ等は、見上がりません。
部品面は
特に焼損等の部品は見当たらず良好です。
動作確認
電源が全く入りません。電流も流れません。
- 制御系小型電解コンデンサ交換
液漏れがあり交換。しかしながら通電せず。 - 制御系 Tr確認
リークの大きめなTrが要因してTrがOnしていないことを見つけ、交換。
それでも、電源は立ち上がらず。 - フィルタコイル接触不良
一次側からスパークする症状を発見、一旦取り外し、再度取り付け。
電源は入るが、過電流になる。 - ゲインボリュームを最小に
ゲインボリュームを最小にすると、正常動作となった。
大型コイルの半田外れ
写真では、わかりにくいのですが、赤丸の半田が振動で、外れてしまって、接触不良で電源が不安定に。
一旦取り外し、端子を磨いて、予備半田を行い修理。
基板配線整備
このPA-3x0シリーズは、リード線による基板配線強化が行われています。
メンテナンス性と安定性を考慮し、銅線による配線に置き換えスッキリさせています。
電源確認と高調波カスタム
一次側
トランス一次側の波形です。電源のメンテナンスは
470uF x3 ->3300uF x2+1000uF
にてボリュームアップ。1000uFは高分子コンデンサを採用して、中高域のインピーダンスを下げています。
これだけでも良好ですが、スパイクが取り切れていません。
表面実装のセラミックと、実装されていた0.1uFx2 を2.2uFと4.7uFに交換
うねりを抑えつつ、レベルを抑えることができました。
二次側(電力)
二次側の電力も電解コンデンサ+高分子コンデンサ+チップセラコンにて対策。
尖ったスパイクがなくなり良好です。
二次側(電圧用)
電解コンデンサを交換後、セラコンをいくつか交換し調整。
電解コン+10u+4.7uにて落ち着きました。
カスタム内容
基本メンテナンスは、アンプの動作をオリジナルに復元する内容になります。
もちろん、現代の素子を使っているので、性能アップも行っています。
今回、様々な、カスタマイズを施します。
- 電源高調波抑制カスタマイズ
これまで、紹介しています、チップコンデンサや、高分子コンデンサの採用で高調波を抑えます。 - GAINのVr交換
GAINのボリュームは、消耗品ですので、シールドタイプのしっかりしたものと交換。 - OpAmp 関係
OpAmpすべてにパスコンを装着。電源ノイズを測定限界以下に。
またOpAmpを超低歪のOPA1652に交換します。
つづく
GAINをMAXにすると発振する問題は、基板をボディから取り外した影響と思われます。
じつは、ヒートシンクがGND回路接続になっており、バラックでは動作しません。
リード線で接続しているのですが、基板のGNDを接続するだけではなく、チャネル独立して接続する必要がありそうです。
整備終了後、本体に取付、性能(ポイントのf特、微小信号確認)を行う際に、もう一度確認してみたいと思います。
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(三万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。