PA-304のメンテナンスが完了し、いよいよ高調波カスタムにすすみます。
微小信号の波形に少しノイズが目立ったのも気になります。
はじめに
前回までのメンテナンス記録は下記よりご覧いただけます。
https://matsubaraharry.hatenablog.com/entry/PA-304/202012-10
当方の行っている、高調波対策は、電源のスパイク等をコンデンサ等を用いて抑制します。
いつもの電源ブロック回路になります、主要の電解コンデンサはメンテナンス時に低esr品と交換してありますので、チップセラコン等で高調波を抑え込んでゆきます。
一次側
この期待は、とても一次側のノイズが小さく優秀でしたが、改めて高用量チップセラコンを追加して、抑え込みます。
スケールアップが必要なほど、ちいさくなりました。
二次側(電力用)
電力用は直接出力に影響がでるので、きっちり抑えたいところです。
チップセラミックコンデンサの他に、チョークコイルも交換しています。
少し過剰ですが、トロイダルコアの漏れ磁束が小さいもの、電流容量の大きなものを装着しました。
二次側(電圧)
ここは、いつも対策が難しいところですが、的確なパラメータで抑え込むと
かなり良好です。
OpAmp電源
オペアンプの電源は、電流が小さいので、電源ラインというより信号同等の配線で施されています。電流は小さいのですが、その分反射がおこりやすいので、電源ターミネーションとして、パスコンを装着します。
高調波対策概要
今回の高調波対策は
を施しています。測定結果としては、改善効果が確認できるデータが得られました。
出力信号
さて、肝心な出力信号の状態を確認してみます。
左側が、標準的なメンテナンスの場合ですが、今回、右側のように標準メンテナンス後でもノイズが多くみられました。
高調波対策を施してやっと、同等レベルという状態です。
これは、明らかになにか回路に問題があるか、もしくは回路に違いがあると考えます。
症状
今回のアンプは、症状として、出力のノイズ等をかんたんにまとめてみました。
- ノイズが大きい
微小信号を観測するとノイズが大きめです。
特にラインを接続するとおおきくなります。 - 発振する
それとは別に、このアンプは、発振しやすく、オシロスコープのGNDを出力GNDに接続すると、発振し、過電流が流れます。
調査
いろいろ調査をおこないました。
- 発振のチャネル調査
発振してしまうチャネルは、AのRchです。 - 出力Tr 仮切断
出力Trのコレクタの半田を取り除き、カットするとたしかに発振はしなくなります。 - 出力Tr交換
出力Trを交換しても、発振は多少抑えられましたが、なくなることはありませんでした。 - その他Tr交換
そのチャネルのTrをすべて交換しましたが、まったく変わりませんでした。
以上より、どうやら、部品の不具合ではなく、なにか回路がことなっているのではと
入力段回路
このアンプの概略入力回路は
こんな感じです。ノイズの小さなアンプと比較してみると、赤丸の抵抗値が異なっていることがわかりました。
今回のは、標準の4倍程度の抵抗値が装着されていました。
試しにこの抵抗をのいずの小さなアンプと同等にすると
やっと高調波対策の効果が確認できるようになりました。
それでも、少しノイズが大きめです。他のPA-300等に比べると大きいです。
GND分離抵抗へコンデンサ追加
以前プリアンプでGND分離にコンデンサを追加すると効果があったのですが、今回はGNDを差動入力として使っているので、ためしてみました。
効果が確認できる値を探すことができました。
前回はuFオーダでしたが、逆にノイズが大きくなり、今回は、少し小さめでした。
音声微小信号
最終的な音声信号のカスタム前後の比較をしてみます
標準メンテナンス時微小信号
かなり大きめですが(それでもデジタルアンプより一桁小さいです。)
カスタマイズ後微小信号
通常のナカミチの状態になりました。
まとめ
高調波カスタマイズもきちんとその効果が確認できましたので、あとは、お好みのオプション等を調整して、周波数特性等を確認後、オーナ様へと。
PA-304は、数十台カスタマイズやメンテナンスしており、実装に色々と違いがあることは知っておりました。OpAmpの電源電圧に違いがあり、注意しておりました。
ノイズもPA-304も少し気になっていましたが、ノイズの小さな機体に出会って初めてその原因究明を行い、それにより、PA-304の本当の実力を知ることができ、良い体験となりました。
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(三万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。