KickerのClass D IQシリーズが流れ着きました。
IQシリーズは、Class Dのタイミングに改善点があることがわかっており、ノイズが目立つ生じになることがあります。本機は、電源を入れてからしばらくすると、AMP2側が発振してしまう状態とのこと。
早速状態を確認すると、確かに再現します。どうやらClass Dの発振現象の様です。
さて、今までの経験を活かして原因を究明(救命)、対策できるでしょうか。
はじめに
KickerのIQシリーズは、内部にDSPを内蔵しています。
また、アナログアンプと同じ使い方ができるように、ゲインや、クロスオーバ、Kicker EQなどがパネルで調整できます。また、パネルロックをすることで、内部DSPですべて処理するモードに切り替えることができます。
仕様等は、前回のブログで確認できます。
DSP内蔵Class D 2ch パワーアンプ Kicker IQ 500.4 - pp audio blog
DSP内蔵Class D 5ch パワーアンプ Kicker IQ 1000.5 - pp audio blog
内部
内部状態は、特に大きなダメージは見当たりません。
メンテナンス
最初に既知の改善点である
- 電源のFeed Back
スイッチング電源がオープンループの単発振回路。
入力電圧により内部電源が変動するのを電圧一定に改造
これにより負荷上昇時の電圧降下も対応 - プリアンプ電源電圧
プリアンプ定電圧回路の正負のバランスがずれてしまうことがわかっています。素子を交換して、対策します。 - Class Dタイミング
Class Dのタイミングは、FETのスイッチングスピードに影響されます。
そのタイミングを調整し、貫通電流による発振を防止 - 高音域のピーク
Class DのLow Pass Filter(12dB/Oct)によるピークの対策
これらを処理して、仕上げます。
電源低電圧化
単純な発振式電源は、一次側のコイルがフルにスイッチングしています
定電圧回路にすることで、スイッチング時間が半分以下になっているのがわかります。
Class Dタイミング
Class Dのタイミングが少し厳しいことがわかっています。本機も貫通電流が流れていることが、わかります。
Dead Timeを調整して、理想状態にできました。
これで、問題の発振は解決できました。
電源メンテナンス(一次側)
いつものように3個装着されている、電解コンデンサを一つ高分子へ。
チップコンデンサも追加して、対策しました。定電圧化も効果があり、電圧変動も小さくなっているのがわかります。
電源メンテナンス(二次側)
二次側も高分子をミックスすることで、変動を抑えます。
高調波が無難に取れています。
Class D 高調波抑制
Class Dの高調波抑制は、12dB/Octが用いられています。
追加でコイルを追加し18dB/Octに変更し、キャリアの漏れを大きく改善しました。
まとめ
IQシリーズは、これまで何台かメンテナンスさせていただいており、改善点がいくつか見つけることができました。
- 定電圧化
- OpAmp電源安定化
- Class Dタイミング調整
- 電源 Dead Time調整
- 高周波帯域のピーク
これらのことで、アンプの安定動作、信頼性をアップし、かつノイズの抑制にも一役買っています。
周波数特性
最後に周波数特性を確認します。
ClassDのアンプは、12dB/Octでキャリア周波数を落とすために、コイルとのコンデンサのバランスがずれ、高周波にピークが生じていることがあります。
追加するLを調整して、高域のピークをなくしています。かまぼこのきれいな特性になったことがわかります。
Class Dのアンプは、小型でハイパワー。低歪のアンプですので、使い方次第で驚くような音をかもし出すことができます。一方、多機能で高密度の為、故障が少し起こりやすくなることも事実です。
今回の動作不能は、電源回路が固定発振であり、電圧が上昇した際に、Class Dの制御回路に負担がかかってしまったと考えています。
同じような問題でお困りの方は、当方まで、ご相談ください。
使用した機器
DAC(D10)
測定用にはD10というDACを用いています。
現在は、後継機のD10Sがあります。
正弦波もとてもきれいです。
オシロスコープ(SDS1102)
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。