ナカミチのクロスオーバーネットワークEC-302は、マニアの方にも人気です。
その秘密は、周波数の切り替えが音質を重視した、スライドスイッチによるところでしょうか。
そんなEC-302をメンテナンスしてみたいと思います。
はじめに
EC-302は、3Wayのクロスオーバネットワークです。通常周波数の設定は、ボリュームによるアバウトな調整が多いですが、このEC-302はスライドスイッチにより細かく設定できます。
- 各出力独立ボリューム
- カットオフ周波数の数値設定可
- ハイレベル入力(最大 3.5V)
- 低歪、高SN比
現状調査
状態を確認してみましょう。
微小レベル信号
微小レベルの状態を確認すると、問題があるかほぼわかります。
Low・Mid及びHihgを確認しましたが、Highが問題になるレベルではありませんがノイズが観測できました。
一次側状態
電源の状態を確認してみます。
特に問題のあるレベルではありませんが、いつもの高調波対策を駆使して抑えたいところです。
二次側
二次側のフィルタ前の波形です。
リップルは確認できますが、優秀なレベルです。
カスタマイズ
さて、いつものようにカスタマイズを行ってみたいと思います。
一次側
高分子コンデンサ(OSコン)を装着することで、リップルが低減されます。
さらに、セラミックコンデンサを複数個しようすることで、微小レベルまで落ち着かせることができます。
これは、出力のノイズ低減に寄与していることが、後でわかりました。
二次側
二次側は、電源用超低ESRのコンデンサを装着することで、
満足の状態になりました。
OpAmp電源
OpAmpの電源は、どうしても基板の制約上、信号ラインレベル幅の配線になります。
電流では、問題ないのですが、高周波数のインピーダンスが高く高調波ノイズが生じてしまいます。
OpAmpにパスコンを付けることでOpAmpからのノイズというより、電源や、誘導ノイズの反射を抑え、吸収することで劇的な効果を上げることができます。
微小信号効果
さて、ノイズ低減の効果は出力に現れるでしょうか。
数値的に改善が確認できました。波形が細くなっているのがわかります。
周波数特性
最後に周波数特性を観測してみました。
High:スルー
MID:15.5kHz(最大)
LOW:4k
OpAmpのフィルタなので、当然のようにフラットな特性です。
減衰カーブも-18dB程度になっていそうですね。
Highはパスモードですが、低域は、カットされていることがわかりました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
電源への高調波対策は、その電源回路の特性に合わせた、コンデンサの容量を選定することで、しっかり抑えることができます。Sパラとシミュレーションを駆使も良いですが、歴史のある機器には、観測しながら、昔ながらのカット&トライも有効です。
今回セラミックのチップコンデンサだけより、ディスクリートのセラコンとチップを併用することで、マッチングがとれました。
いままで、ESRとして優位なチップコンデンサを中心に対策していましたが、手法が変わってきています。おそらく、インピーダンスが最小になる周波数がチップとディスクリートでは異なっているため、効果的なのではないかと考えています。
廉価版のデジタルオシロスコープがあれば、どなたでにもきますので、ぜひ興味のある方は、挑戦してみてはいかがでしょうか。
もちろん、当方にメンテナンスのご依頼も大歓迎です。
(おまたせしてしまうかもしれませんが、ヤフオクを通じてオーダ可能です。)
続編としてEC-204のカスタマイズもつづってみました。
ナカミチ クロスオーバ EC-204 整備録 - pp audio blog
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(三万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。