カーオーディオのアンプには、様々な方がチューニングされているアンプがたくさん見受けられます。当方に流れ着いたアンプにもチューニングされたアンプが時折見受けられます。その様なチューニングは、意外と効果が測定できない改造の場合があります。今回は、チューニングアンプを見極めるポイントを、ご紹介したいと思います。
カスタム方法
アンプのカスタムは、コンデンサの交換やOpAmpの交換がよく見受けられます。チューニングアンプとして出品されているものは、オーディオ用の高級コンデンサを多様して、魅力的に見えるものが多いですが、その効果は、抽象的な表現ばかりです。
以前から不思議で、数値や波形で改善効果を示してくれるとより信用できるのですが、なかなか、お目にかかれません。
電源用平滑コンデンサ
電源用のコンデンサには、大きめの電解コンデンサが使われています。
それらのコンデンサを比較評価すると、どうしても電源用、スイッチング用の電解コンデンサが良い結果になります。オーディオ用コンデンサは、決してコンデンサの基本能力(ESR等)が優れているわけでは、ありません。
(現実のコンデンサには、どうしても多かれ、少なかれ抵抗成分があります。この抵抗成分をESRと呼びます。これが、小さくかつ周波数で変動が少ないのが理論的には良い結果をもたらします。)
どちらかというとノイズを発生しないように考えられています。確かに信号ラインに装着すると良いことがあり、カップリングコンデンサや、比較的小型のコンデンサに限られます。
今回のPA-302の例で説明します。
チューニングされたアンプで、その状態で、波形を確認すると、下記のようになります。
少し大きめですね。
このうねりは、高調波対策用の標準で付いているフィルムコンデンサ(0.1uF)による効果です。大きいようですが、スパイク状のノイズよりはるかに良質なノイズです。
電解コンデンサ単体での測定
標準で付いている、高調波対策のフィルムコンを外して、電解コンデンサのみの特性を測定します。
鋭いスパイクが確認できます。このアンプは、きちんと考えて対策をされている証拠です。
これを、同じ容量の4700uFの電源用のコンデンサと交換します。
オーディオ用と電源用の電解コン比較
ピークのヒゲが少し大きくなっていますが、凹みが小さくなっているのがわかります。
これが、オーディオ用と電源用のコンデンサの特徴がよく現れていると思います。
オーディオ用は、低周波は弱いですが、高周波の特性は、良くヒゲが小さくなっています。
これで、リップルが高周波の傾向の電源には、ノイズがちいさくなり、オーディオ用が良く聞こえる理由ではないでしょうか。
改善例
測定をしながら少しコンデンサの追加を行っています。
OSコンや、大きめのチップセラコンを追加してみますと
手順としては、
- 低い周波数を抑制
- 比較的高い周波数の対策
- 最終的には高調波の対策
この手順により、効率的、効果的改善ができます。波形のノイズが激減しているのが分かると思います。
スケールを変えて測定が必要な程です。
一般チューニングとppカスタム比較
今回の一般的なチューニング状態と、当方で行ったカスタムの最終比較をしてみますと
こんなにも違います。
この様な結果が出て初めて、ヒヤリングを行うようにしています。
ここまで違えば、音出しは、とても楽しみになり、失敗はありません。
適材適所のコンデンサ種類
カップリングコンデンサには、フィルムコンデンサが音が良いと言われるのは、広範囲でESRが小さく、かつ、圧電ノイズが少ないからが理由とされています。
ですが、電源等の場所の電解コンデンサを無理をしてフィルムコンデンサを交換しても、大きな効果は、期待できません。
そんな場所には、電源用の長寿命、低ESRのコンデンサや、オーディオ用の電解コンデンサの方が合理的です。
高調波対策
高調波対策として、セラコンやフィルムコンを追加することが見受けられますが、その高調波に適合したコンデンサの必要があります。
単純に追加すると逆効果になる場合があります。
コンデンサの容量を適正値にすると、こんなにも違います。
小さなコンデンサの追加は、容量が適正か、確認して初めて、有用になります。
高エネルギースパイク対策
大きなスパイクがある場合は、コンデンサの組み合わせや、インピーダンスを下げる改造が効果的です。
この例では、大きくうねっているのがわかります。
装着する場所も電解コンデンサの場所とは別の、適切な箇所に装着し、適切な容量を装着しないと、改造の意味がほとんど無いか、逆効果になることがあります。
ハンダ打ち直し
全部ハンダ打ち直しを謡い文句にされていることがありますが、すべてをハンダし直す必要がある場合は少ないです。重要なのは、大きな部品、高温になる部品のハンダの状態を確認して行うことです。
また、ハンダは、一度綺麗に吸い取ってから、新しくハンダ しなくてはなりません。この作業は、とても大変ですので、手作業で行うことは、現実的ではありません。全ハンダ打ち直しの説明を目にされたら、必ず基板の状態を確認が必要になります。
上の例は、だんご状の芋ハンダと呼ばれる状態で、接触不良が発生しています。芋ハンダは、一見はんだ付けしているように見えますが、実は、パターンについていない場合があり、接触不良を起こします。実際に、数件見たことがあります。基板の状態の写真があれば、確認することをおすすめします。
全く問題ない箇所をハンダを行うと、パターン剥がれや、素子へのダメージがあり、あまりメリットがありません。
ハンダの状態は、フィレットと呼ばれる、富士山のような末広がりの形状が求められます。少なくとも、現場でのハンダ付けの経験者なら、だんごの様なハンダは、考えられません。
ハンダの状態を見ると、そのチューニングの方の技量がわかります。
OpAmp載せ替え
OpAmpを載せ替えると気軽に音の変化を楽しめます。スペックの良い、評判の良いOpAmpに載せ替えたチューニングアンプは、魅力的ですね。
ですが、OpAmpの載せ替えには、見落としがちなポイントがあります。
- 消費電力
音の良いOpAmpと評判のものには消費電力が大きいものがあります。パワーアンプのOpAmpの電源容量は、ギリギリに作っているもがありますので、この値を超えると電圧が不安定になり、電圧も下がってしまいます。また、電流が増え異常発熱を発生する場合があります。 - 電圧
意外と電圧のMAXが小さいOpAmpがあります。人気のOpAmpには18Vが最大のものが多く20V等を印加してしまうと、しばらくすると壊れてしまうことがあります。
OPA627等は、2個使いのことが多く、電流が倍以上になることがあります。そこまで確認された、チューニング内容で有ることが必要です。
まとめ
チューニングアンプをお求めになる場合
- 電源には、電源用のコンデンサを使っているか?
- ハンダは、綺麗なフィレットで処理されているか?
- 高調波対策にチップコン等、適材を採用しているか?
- OpAmpの電源等にも対策がほどこされているか?
- OpAmp載せ替えは、電源電圧と電力も互換可能品か?
- 信号系統ではない箇所に不適切な大きなフィルムコンデンサを使っていないか?
- 効果を波形確認等で、行っているか?
これらを、チェックすることで、納得して、ご購入できると思います。
いかがでしたでしょうか。アンプの部品の交換もそう単純ではなく、効果を得られるためには、様々な調査、確認が必要で有ることが理解できたのではないでしょうか。
今は廉価版のオシロスコープがありますので、ぜひ、単純に交換するだけではなく、それぞれの効果を確認されてみては、いかがでしょうか。
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札、ご検討ください。