時折、音が出なくなる症状のPA-304が流れ着きました。
幸いなことに、内部の状態は良さそうです。きっちりメンテナンスし、ナカミチの音を蘇らせてみたいと思います。
はじめに
おなじみの45W x 4chのパワーアンプ PA-304。人気のアンプです。
PA-30xシリーズの中でも、少し回路が多く物理的に厳しいアンプで、どうしても長年使っていると不具合を起こすことがあります。
PA-304仕様
このPA-304は、4chアンプで、4スピーカ仕様、マルチアンプ、さらに、BTLで2chの高出力と、様々な使い方ができるのが、人気の特徴ですね。
内部状態
裏蓋を外すと、一部液漏れが確認できますが、比較的小さな範囲ですので、修復できそうです。
部品面を確認しても、著しく部品が損傷しているものは見当たりませんので、比較的良好です。
コンデンサの液漏れは、二次の部分です。
メンテナンス依頼していただいて、損傷がひどくならずに済みました。
よかったです。
メンテナンス
早速、メンテナンスしてみました。
基板洗浄
電解液を中和しつつ、洗浄します。
二次の電源パターンを中心に、ジャンパや抵抗を外して、研磨します。
しっかり腐食を除去しておかないと侵食が進んでしまい、また動かなくなってしまいますので。
- 電解液の浸透した部品を外す
- パターンを研磨
- 部品取り付け穴を洗浄
- 部品取り付け
- レジスト
という、工程でしっかり修正します。
手間がかかりますた、しっかり直しておきます。
部品実装面状態
液漏の、二次の電解コンデンサ(写真左下)をはすし、
ジャンパや抵抗を新品に交換して、新しいコンデンサを取り付けます。
修繕完了
修繕が一通り終了しました。
高調波対策は、一度動作確認を行ってから進めます。
動作確認
基本修繕きちんとできているか、電源を中心に確認してゆきます。
一次電源ノイズ
一次(入力、一次)のノイズを確認します。
入力の変動も小さく、一次側も7V程度あり、少し大きめでしょうか。
問題なく、動作確認ができました。
二次側(電力用)
チョークコイルが入っている為、三角波の電源波形が観測できます。
標準的な波形で、正しく動作しています。
二次側(電圧用)
電圧用は、標準では、スパイクが強めですが
100mV以下ですので、とても優秀です。電解コンデンサが低ESR品の効力です。
スパイクは、この後、きっちり抑え込む予定です。
OpAmp電源
一般的には、ノイズが確認できます。
平滑コンデンサに小さめのセラミックが使われているので、少し波が確認できます。
微小出力波形
簡単に出力の状態を確認してみます。微小出力状態なので、とても厳しい測定ですが
少し、標準的な、高調波が観測できます。
高調波カスタマイズ
さて、いつものピアニシモカスタマイズを行ってみます。
一次側
効果が顕著に確認できる一次側。高分子やセラコンを使って抑えます。
少し一次は、スパイクが大きめでしたが、0.5V程度に抑え込めています。
二次側(電力)
同容量にも関わらず、チップコンデンサの効力との相乗効果で、きっちりと抑え込めています。
二次側(電圧)
電力こそ小さめですが、スパイクが目立つ二次側も
スパイクを適度に抑えているのが確認できます。
OpAmp電源
OpAmpの電源は、PA-304のアキレス腱でもありますが、放熱の対策をしっかり行い、
きっちり抑え、OpAmpへの影響を無視できるレベルであることが確認できます。
出力信号
これらの効果をアンプの出力端子の状態で確認します。
微小信号
少し大きなノイズが観測された
-80dBと微小なレベルですが
しっかり基本波がみえるまでになりました。
周波数特性
カップリングもオリジナルのままの仕様です。
念の為、一般的なPA-304と比較してみました。
ぴったり、一致しています。標準的なPA-304に仕上がりました。
まとめ
幾度となく繰り返した高調波対策が収束方向に向い、対策がまとまってきました。
今回のアンプは、少しの修繕で、効率的にカスタマイズをすすめることができました。
基板実装状態は、決して大げさではありませんが、実力は、これらの数値が物語ってくれます。
ハンダ面もレジストの補修を行い
完成です。
端子台ネジもスピーカ用は、幅の狭いものに統一して完成です。
ヒアリング
電源のピアニシモ化で、オリジナルの音声回路が生かされ、ゆったりと聴ける仕上がりになりました。
最終的には、オーナーの方に判断を委ねます。
***
いかがでしたでしょうか。オリジナル性を重視した、ピアニシモ仕様もとても魅力的です。一度聞いてみたいと思われたなら嬉しいです。
もし、同じ様にカスタムをしてみたいと思われたらプロフィールのメアドまでご連絡お願いします。
これまでのPA-304のメンテナンスは、下記よりご覧になれます。
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カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。