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PA-304 ブリッジ動作 確認(カスタム・メンテナンス)

PA-304のカスタムメンテナンスの機会に恵まれましたので、その様子と、ブリッジ動作(BTL接続)のノイズ測定を試みてみました。さて、ブリッジの効果はどうでしょうか。

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はじめに

ブリッジ接続とは

 今回はPA-304で、ブリッジ増幅機能を持ったアンプです。2chでそれぞれ、正極、負極増幅し、アンプの電源電圧はそのままに、倍の電圧(電力は4倍)を絞り出す方法です。(ナカミチは、SWでブリッジ切り替えすると、電源電圧を抑えて、最大電力を同じにしています。)

ブリッジに関する資料はたくさんありますので、今回はPA-304での説明になります。

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初段の電圧増幅回路のOpAmpで入力を非反転と反転増幅してそれぞれの電力増幅回路を動作させます。

ノイズ抑制効果

ブリッジのノイズ抑制効果として、パワーアンプの同相のノイズが出力で打ち消されることによるものがよく知られています。

簡単な図ですが、下記のようなイメージになります。

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微小電力時

大きな出力時の正弦波では、教科書どおりの波形になってしまいますので、少し、ノイズまみれになりますが、効果を確認するのによいのではと考え、微小信号( 約8mV)で確認してみました。

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気持ちの良いものではありませんが、極端な例です。

(ノイズは、測定の条件等もありますので、あくまでも参考例です。)

 

これを、ディファレンシャル(差動)として観測すると

 

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電圧が倍になり、ノイズが、半減しているのがわかります。これが、ブリッジの魅力でもあります。

電圧が倍で、ノイズも半分であれば、トータル12dB SN比が稼げることになります。

魅力的ですね。

ただ、メリットばかりではないので、用途によっては、メリット・デメリットを見極めて使われるのが重要かと考えています。

 

ブリッジ効果(FFT解析)

FFTで違いを観測してみました。

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測定条件を同じ(オシロスコープのGNDをフローティング)で測定しています

かなり高調波のエネルギーが減衰していることがわかります。

 

メンテナンス記録

せっかくですので、今回のPA-304のメンテナンス記録を少しだけ。

コンデンサ液漏れ

どうしても、カーアンプは、トランクや、シートの下で、カーペットで保温された状態になり、高温になりがちです。電解コンデンサに負担がかかり、20年以上使われるとどうしても液漏れ等が発生してしまいます。

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一見大丈夫そうですが、アルコールで洗浄し、腐食部分を削り取ってみると、

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残念ながら、パターンが切れていました。

腐食の修繕は、腐食の剥離と、パターン切れの修繕、その後、レジスト塗装処理を行います。

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電力の大きい場所で、極端にパターンが痩せている場合は、銅線等で補強しなくてはなりませんが、今回は、大丈夫そうでした。

基板焼け

PA-304には、時折、OpAmpの電圧を低く設定して、そのため、電源回路に負担がかかってしまい(Drop Outなので)温度マージンが厳しい状態のものがあります。

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トランジスタや、抵抗をワンランク大きなものにして、放熱を上げ温度を下げます。

また、基板のパターンが熱により弱くなっているので、0.1mmの基板で補強します。

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カスタム検証

いつもの電源概略図です。

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一次側

超低ESRの電解コンデンサに交換すると、一次側のリップルは、高調波はありますが、電圧変動は、小さく収まっています。

ポイントは、高調波をどうやって抑えるかです。

当方が行っているのは、高分子コンデンサ(OSコン)とチップセラコンのあわせ技です。

 

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OSコンだけでも十分ですが、高調波をなるべく抑えたいので、大きめのチップセラコンで抑え込みます。

二次側(電力)

PAシリーズは、二次側にフィルタ(チョークコイル)が入っているので、比較的小さいですが、スパイクがあります。これを、チップセラコンで対応しました。

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二次側(電圧)

二次側の電圧用は、チョークコイルが入っていないので、大きなスパイクが観測できます。

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だいぶ進化しており、綺麗に抑制されているのがわかります。

 簡易SN比

微小出力状態(約8mV)での信号とノイズの比率をFFTで解析してみました。

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計算上119dBのSN比率となります。スペックは、115dBなので、この測定環境では、上々の結果です。

f特

最後に周波数特性を簡単に測定しました。40kHzでも-1dB(-0.544) 以下と優れているのがわかります。

 

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まとめ

いかがでしたでしょうか、ブリッジ接続の魅力が少しお伝えできたのではと思っています。PA-304は4chなのでXLRのラインを直接入れて、バランスアンプとして使う方法っもあります。バランスのDAC等を入手できたらまたお伝えしたいと思います。

 

*腐食リペア

PA-304は、腐食によるダメージが見受けられることがあります。

それでも、諦めず直せます!?

 

matsubaraharry.hatenablog.com

 

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