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オーディオと電源回路 ピアニシモを聞くために

ナカミチ PA-302S メンテナンス 2021 01 整備録

方チャネルの音が小さくなるPA-302Sが流れ着きました。さっそく内部を確認したところ、こだわりが随所に。オペアンプには、OPA637を装備する徹底ぶりです。
さて、音の小さくなる原因や、OPA637をきちんと動作させる環境になっているか調べてみたいと思います。

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 はじめに

さっそく、内部の状態をみてみましょう。

基板状態

高負荷のコンデンサはオーディオ用に交換されています。

歴史のあるアンプは、やはりコンデンサ交換は、効果的です。液漏れで基板にダメージがないことは、とても重要です。

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OPA637

シングルOpAmpのOPA637をデュアル化基板を用いて、とりつけてありました。

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サイズが大きいので、カップリングコンデンサの実装に苦労の痕跡が見られます。

電流値が大きいので、電圧がドロップしていないかが心配です。後で、電圧を調べてみたいと思います。

ハンダ面状態

ハンダ面の状態もよく、劣化はありません。

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GNDのパターンが強化されています。銀入ハンダを使っているようです。

フラックスが残っていますので、洗浄しておいたほうが良さそうです。

初期メンテナンス

ターミナルの清掃からはじめます。

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状態がよく、すぐに完了です。

電源メンテナンス

毎回同じブロック図になり、恐縮です。

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基本的な、プッシュプルのスイッチング電源です。

入力ノイズ

入力のノイズを確認してみました。標準的な状態ですね。

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いつもの手法(高分子コンデンサ)等で観測限界になります。

一次側ノイズ

一次側は、一般的に大きめです。標準的な状態です。

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あまり気づかないコンデンサを、高分子交換。さらにセラコンを追加し、効果的に抑制します。3.5Vの P-Pが、1/7の0.5V程度になります。

これで安心して次のステップへ進めます。

二次(電力用)

 電力用は、フィルタが装着されているので良好です。

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100V耐圧のコンデンサが装着されており、高周波特性も良さそうです。

この部分は、そのままで、AMP側のコンデンサの変更みで対応可能そうです。

二次(アンプ側電力)

アンプ基板にも平滑コンデンサが1000uFx4 装着されているのが標準です。
これがPA-302の特徴でもあり、力強さ、低歪の源です。

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状態は良好ですが、もう少し容量をアップしておきます。

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1000uF x4から、1000uFx2 +2200uFx2としました。リップルがわずかに改善しています。

二次側(電圧)

二次側は、スパイクが大きいので、少しだけ高調波対策を施します。

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高分子のコンデンサに交換することで、リップルがかなり低減します。その上にセラコンを追加で、高調波を抑制します。

OpAmp電源

まずオペアンプの電源を測定してみました。

OpAmp電圧: 36.5V

36Vが絶対最大電圧のOpAmpのスペックを少しオーバしています。

 

電流がOPA637を2つ装着すると増え、電圧がドロップしてしまうと懸念していましたが、老婆心でした。

OPA637の消費電流は、7mA/個、2個使用なので、14mA必要です。

一方標準の4570Cは5mAです。約3倍です。

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概略回路で分かるのですが、電圧を少し落としてあげると電流値のマージンが増えます。

 ダイオードの制限があり、ほんの少し下げることが難しいのですが、33V程度にするのが良さそうです。

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そのまま最大36VのOpAmpを使うのは、注意が必要です。

 

今回は、ダイオード、抵抗、及びトランジスタを容量アップしています。

OpAmp電源ノイズ

標準では、高調波が確認できます。パスコンを追加すると

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測定限界になりました。これで安心です。

カップリングコンデンサ実装改善

苦労されて実装されていたカップリングコンデンサを、少し工夫してみました。

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並列のフィルムコンデンサと場所を交換しただけですが、スッキリしました。

片チャネルの不具合

再現性がとぼしかったのですが、どうやら出力保護リレーの接触不良の可能性が高そうでした。リレーを交換で、エージング等で確認することにしました。

実装仕様

さて、メンテナンスは、どの様に仕上がったでしょうか。

  • 電源カスタム
    高調波対策の経験を元に合理的にノイズを低減
  • リレー交換
  • OpAmp電源電圧補正、強化
  • ボリューム交換
  • カップリング実装改善

OpAmpのダブルソケットは少し目立ちますが、とてもシンプルにまとまりました。

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これで末永く、OPA637の能力を発揮でるようになりました。

まとめ

今回、片チャネルの音が安定しないとのことで、半固定や、アンプの出力段を疑いしましたが、何度かOn/Offやヒヤリングを繰り返しても再現しなくなりました。

PA-302で時折発生するリレーの接触不良で落ち着きました。

また、PA-302は、OpAmpの電源に余裕があることが分かり比較的大きなOpAmpでも駆動できそうです。ただし、実際の信号を加えると電流が増えますので、やはりもう少しマージンはほしいところです。

もう少し消費電流が小さいものへの交換の検討余地は、残されていると思います。

 

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カスタムナカミチアンプ

オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。

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使用した測定器

使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ

廉価版(三万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。

FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。

波形貼り付けもPCにUSBで可能です。

奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。

OWON ハイコストパフォーマンスデジタルオシロスコープ 1Gs/s 100MHz帯域 薄型軽量 SDS1102

 

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