今回は、PA-302を国産OpAmpのmuses02仕様で仕上げてみます。
musesシリーズは、”~ひとの感性に響く音を追求~”のコンセプトの元に開発されたOpAmpで、オーディオ用として特別の配慮を施されているそうです。
見落としがちなのは、この musesシリーズは、電源電圧が標準で15V、最大16V、絶対最大値18Vの仕様になっており、PA-302は、20Vの機種もあり、少なくともそのまま使うのは、好ましくありません。
いつもの高調波対策を施した後、OpAmpの電源を調整し、OpAmpの性能をフルに引き出す、ピュアアナログアンプに仕上げてみたいと思います。
はじめに
念の為、PA-302の仕様をおさらいします。
PS-302だけは、カップリングにフィルムコンデンサを用いています。
生産時期により、2.2uFが一つのものと2個使いのものがあります。低域に若干の違いが容量の違いにより生じます。
このPA-302は、2.2uFが一つ使いの仕様でした。
もちろん、高分子にして、容量もアップのカスタム予定です。
基板状態(ハンダ面)
裏蓋をあけてみると、
少し液漏れがあります。
基板状態(部品面)
基板をとりだしてみると、一次側の電解コンデンサの液漏れが見えます。
基板洗浄
電解液がついたまま、半田コテを使うと、半田コテも腐食してしまうため、め一旦軽く洗浄後、部品を取り外します。
近傍のジャンパや、抵抗、ダイオードも取り外し、基板をきれいにします。
パターン研磨
部品を取り外したので、パターンの研磨を行い、酸化した銅箔をきれいにして、侵食が進まないようにします。
すべての確認の後、レジストを塗布して仕上げます。
部品組み込み
いつもの、電源専用の電解コンデンサ等の部品を取り付け、標準整備状態に仕上げ、動作確認を行います。その後、高調波対策を施します。
カスタマイズ
カスタマイズは、標準整備状態で、電源の状態を確認し、その後高調波対策を施します。
一次側ノイズ
電解コンデンサが交換されているので期待して確認します。
入力ノイズ
標準整備でもかなり良好です。
高調波対策を施すと、いつもの安心できる状態になりました。
一次側ノイズ
スタンダードのPA-302では、3Vを超えるスパイクが観測できますが、電源用コンデンサと、コンデンサ接続を2倍の直径ケーブルにしたことで、かなり低減しています。
そこに、チップセラコンと高分子を追加することで、いつもの0.3V程度におちつきました。
二次側(電力用)
フィルタのコイルがPA-302とPA-302Sとで、異なっています。
PA-302のコイルは、幾分鋭角な波形になっています。
コイルと、セラコン追加でなだらかになりました。
二次側(電圧用)
スパイクのキツめの電圧用は
セラコンで抑え込みます。
P-Pが250mVが60mV程度になりました。
電力用電源(アンプ基板側)
アンプ側の電力用電源の状態は、標準で、リップルがわずかに観測できるレベルでしたが。
電源基板側の対策効果で、いつものように、測定限界近くになりました。
OpAmp電源
OpAmpの電源は、大元の強化だけでは、誘導によると思われる高調波がきになります。
パスコンをOpAmp直下に追加することで、抑え込みます。
また、電源電圧を
19.5V ー>16V
に変更しました。それに伴い、電流制限抵抗も変更しています。
出力確認
最後に、カスタム確認の為、微小信号と、周波数特性を確認します。
微小信号
もともと良好でしたが
さらに改善、測定限界近くになっています。
周波数特性
周波数特性は、高分子フィルムコンデンサにより低域が改善され、
ほぼフラットになりました。
まとめ
電解液による基板の腐食は、パターンの溶断はなく、手間はかかりましたが、きっちり修繕できました。
カスタム後実装
いつものように、スッキリと、標準実装仕様として耐えうる状態にしています。
- 電力電解コンデンサ
結局すべて交換。 - フィルタコイル
電力用電源のフィルタのコイルは、トロイダルコアに変更。
磁気漏れによるノイズ減少が見込めます。 - OpAmp
muses02を採用できるように電源電圧を16Vに調整。
その分、電流制限抵抗も変更しています。
もちろんSN比の向上、ハイレベル入力仕様、OpAmpのゲインを-6dB。
これにより、OpAmpの能力を発揮できるようになりました。
msues8820と同等のプロセスで、違いの楽しみは、オーナの方の特権です。 - VR交換
大型のメタルシールドのボリュームに交換。 - カップリング
高分子フィルムは、カップリング用にとても適しています。
大きなフィルムコンデンサも良いですが、装着が難儀です。
最近、同じナカミチのチューニングアンプで見受けられるようになりました。
だいぶ浸透してきて、嬉しいですね。
カスタム後基板面
レジストを塗布し、仕上げています。
外観仕上げ
外観は、清掃とタッチアップを行い整えました。
端子台も磨きあげました。
新品の端子ネジをとりつけ、完成です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
PA-302は、内部の構成が余裕があり、OpAmpの違いを楽しむ良いアンプだと思います。
もし状態のよいPA-302と出会うことができたなら、ぜひ、メンテナンスに挑戦してみてはいかがでしょうか。
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カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(三万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。