5chのデジタルパワーアンプ Kicker IQ 1000.5のメンテナンス整備です。
前回、電源を標準的な動作にできましたが、しばらくすると動作が不安定になります。どうやら、Class Dの制御が不安定になっている模様。調査を再開します。
おさらい
一般的なスイッチング電源の周期は、概ね50%以下で一定です。消費電力による変化は、Dutyにはほとんど影響されず、トランスに流れる電流が変化するだけです。
(消費電力が大きくなることで入力電圧が下がると補正する働きでDutyがわずかに変化します。)
電源の安定化
初期では、スイッチング周期が限界ぎりぎりの状態
電圧のFeedBackが必要であることがわかり、
Dutyが30%程度になり、消費電力も小さくなりました。
また、立ち上がり時に高い電圧を発生することも、防ぐことができました。
Class D調査
電源は安定したのですが、10分程度すると
出力から異常パルスが出力されてしまうことがわかりました。
DeadTime調整
原因の一つとして、DeadTimeが短く貫通電流が流れてしまう可能性があります。
大きめのDeadTimeにして、調整してみました。
きれいな矩形波にすることができました。
しかしながら、やはり10分ぐらいすると安定しません。
Class D回路
Class Dアンプは、デジタルアンプと呼ばれています。この回路、制御ICは、アナログ回路で、実現しています。
音声信号に三角波のキャリアを載せ、コンパレータで、PWM信号を生成します。
どうもたち下がりの際に、ノイズが載っているようです。
PWM波形初期状態
最初にPWM波形状態をみてみます。
PWM波形と出力波形がほとんど一緒で、きちんと制御されています。
異常時のPWM波形
しばらくするとPWM波形が変化してきます。
グリッジみたいに変化し、スレッシュレベルを超えて出力に異常パルスが生じてしまいます。
エラー解析
最初コンパレータの不良を疑ったのですが、そうではなくて...
コンパレータの出力は、オープンコレクタで、一瞬出力がHighになっても、ゆっくり上昇します。どうやらコンパレータの入力の三角波にノイズがのってしまって、出力が微妙にノイズが生じているようです。
また、一部のチャネルのClass D制御ICの動作が不安定であることもわかりました。
続く
現象は、掴めてきたのですが、まだ三角波に乗るノイズの原因は不明です。
PushPull駆動素子の貫通電流の影響も考えましたが、DeadTimeを調整しても変化がありません。もう少しいろいろな信号の状態を観測して原因を救命する必要がアリアそうです。
使用した機器
DAC(D10)
測定用にはD10というDACを用いています。
現在は、後継機のD10Sがあります。
正弦波もとてもきれいです。
オシロスコープ(SDS1102)
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。