音が出たり出なかったりするPA-304Sが流れ着きました。
PA-304Sは、日本製で、電源回路にFETを用いたマイナーチェンジバージョンです。
この304Sには、電源が安定せず発熱等の問題を抱えていることがわかっています。
そんな、問題も改善し、しっかり、オリジナルを尊重したメンテナンスを行いたいと思います。
はじめに
仕様
PA-304Sは、他のSバージョンと同じ様に、オリジナルモデルに対して、エッセンスが加わっております。スペックは、同じですが。
この2点が大きく変更になっているようです。
コンディション
アンプの状態を見てみましょう
裏蓋をあけてみると
絶縁紙にくすみが見られ、基板の温度が上昇した状態であったことが伺えます。
基板の状態は、まずまずで、液漏れの侵食もなさそうです。
一方GNDとシャシーを接続するネジに絶縁ワッシャーが取り付けられています。
また、よく確認すると、
ヒートシンクのネジが外れています。
一本は、アンプの中に、転がっていました。ショート等なくてよかったです。
OpAmp電源焼け
PA-304のOpAmp電源は、少し温度マージンが足りないことがわかっています。
この機体も焼けています。あとで、しっかり修繕してみたいと思います。
修繕
OpAmp電源
OpAmpの電源は、抵抗とTrを放熱効率のよい大型に変更します。
これで、温度上昇は、手で触れられる程度になります。
はんだ付け(芋ハンダ)
音の出ない要因は、GNDの接続ネジとヒートシンクの接続と思われましたが、その他にも、はんだ付けに問題がありました。
なにか音がでなかったからでしょうか、ハンダを追加し、芋状にしています。
よくチューナさんがアピールしているハンダ打ち直しですが、正しくは、一度吸い取って、劣化(酸化)したハンダを除去しなくてはなりません。
また、芋状になった場合、ハンダがついているように見えて、ついていない場合があります。製造過程では、この状態は、不良品で、出荷は許されませんでした。
余分なハンダを吸い取って、しっかりフィレットが現れるように作業しました。
メンテナンス内容
- 電源
耐久性アップ、安定性アップ、低ノイズ化を施します。 - OpAmp電源
先の高用量の素子に変更し、温度上昇と安定性を図ります。 - GND係数変更
入力のRCAのGNDと内部GNDの接続係数を見直します。
これにより、出力に見られる高調波をさらに低減できます。
メンテナンス検証
メンテナンス完了したので、各部の状態を確認します。
電源(一次側)
一次側は、スパイク、変動が気になりましたが
無理なく抑え込みました。
二次側(電力用)
大型シールドタイプのチョークコイルが採用されているので、オリジナルでも良好でしたが、
超低ESRの電解コンでさらに抑え込みます。
二次側(電圧用)
スパイクがきになるところですが
僅かですが、改善が見られます。
二次側(電圧用)追加
PA-304Sには、電源が少し発振してしまう、既知の問題がありました。
発振がおさまり、変動量も小さくなったことがわかります。
出力確認
妥当性の確認として、出力観測と周波数特性を見てみます。
微小信号
通常の状態では、
正弦波の確認が厳しいですが
かなり改善してることがわかります。
周波数特性
最後に周波数特性
いつものきれいな特性が表れました。
二台目整備
今回は、PA-304Sを2台整備しました。
電源(一次側)
二次側(電力用)
オリジナルでも良好な状態した。
二次側(電圧用)
少し発振気味でしたが
電源の安定化を図り、改善できました。
出力確認(#2)
微小出力
オリジナル状態では、さすがに、高調波がきになります。
GNDパラメータ変更と電源の安定化で
無理なく抑え込みました。
周波数特性
まとめ
音の出なかった、要因は、GNDとシャシーの遮断と、ハンダ不良でした。しっかり修繕して、PA-304Sを蘇らせました。
細かいところですが、端子ネジも、磨き上げ
絶縁シートも新品に
基板状態は、オリジナルとして通用できるように
これで、オーナー様の元で、末永く、音楽を奏でてくれるでしょう。
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。
使用した機器
DAC(D10)
測定用にはD10というDACを用いています。
現在は、後継機のD10Sがあります。
正弦波もとてもきれいです。
オシロスコープ(SDS1102)
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。