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オーディオと電源回路 ピアニシモを聞くために

DSP内蔵Class D 2ch パワーアンプ Kicker IQ 500.4

KickerのClass D IQシリーズが流れ着きました。

IQシリーズは、Class Dのタイミングに改善点があることがわかっており、ノイズが目立つ生じになることがあります。本機もノイズが気になるとのこと。

通電後しばらくすると、ノイズが生じ電源電流も増えます。

さて、今までの経験を活かして原因を究明(救命)、対策できるでしょうか。



はじめに

KickerのIQシリーズは、内部にDSPを内蔵しています。

また、アナログアンプと同じ使い方ができるように、ゲインや、クロスオーバ、Kicker EQなどがパネルで調整できます。また、パネルロックをすることで、内部DSPですべて処理するモードに切り替えることができます。

このIQ500.4は、IQ1000.5のサブウーファ出力を除いたアンプに相当します。

Kicker 100.5

DSP内蔵Class D 5ch パワーアンプ Kicker IQ 1000.5 - pp audio blog

 

内部

500.4にも、500.2と同じサブ基板が2枚、装着されています。



写真では見にくいのですが、左脇にControlという名称での小基板が装着されています。

これは、Class Dの制御を司る基板です。

リワーク修正

DSPの基板をよく見ると、メーカのリワークが施されていることがわかりました。

チップの電解コンデンサのががれを修正していますが不安定です。

 

チップLEDの固定用の接着剤を用いて

補強しました。これで振動にも耐えられるでしょう。

既知改善内容施工

これまでにわかっている改造を施し、問題が改善するか確認します。

電源電圧FB

電源のFBが無いことがわかっていますので、追加します。

スイッチングがフル動作から、きちんとDutyによる電圧制御になりました。

また、電流が2Aから約1.5A程度に下がり、発熱も少なくなりました。

Class Dタイミング

Class Dのタイミングが少し厳しいことがわかっています。本機もやはりタイミングが調整が必要です。

Dead Timeを調整して、理想状態にできました。

消費電流も少なくなりましたが、問題の発振はまだ生じます。

PWM波形観測

PWMを少し長い時間観測してみると

以前観測した短いパルスが観測。これは、15V電源の不安定によることがわかっています。

電源を改善すると、やっと誤動作が生じなくなりました。

DSP設定初期化

動作を確認するために、DSPのソフトウェア(FW)状態を確認するために、USBを接続、工場出荷状態にします。その後FrontとRearで使えるように設定。

 

カスタマイズ

カスタマイズは、

  • 電源メンテナンス
     電源状態は良いので、必要箇所のみ低ESRと交換
  • 電源高調波対策
     高調波のチップセラコンの容量を適正値に
  • Class D出力の高調波抑制
     出力に小さめのコイルを追加し高調波を抑制

を施します。

電源メンテナンス(一次側)

静電容量をアップし、一部高分子に交換

チップコンデンサも追加して、対策しました。

 

電源メンテナンス(二次側)

電解コンとチップコンデンサを交換

ほんの僅かですが、改善しています。

Class D 高調波抑制

出力に小さめのコイルを追加

キャリア信号の漏れを抑制しました。

基本メンテナンス

Class Dのアンプは、スイッチング素子のタイミング確認を念のため行います。

Class Dタイミング

VOUT信号(SPの前段)の勾配を確認します。

わずかですが、スイッチングのDeadTimeが少ないことがわかりました。

調整することで、歪や、発熱を低減することができます。

約50nほど遅くすることでかなり良くなりました。

電源調整

IQシリーズの電源は、固定発振方式で、入力電圧に左右される傾向があり、FBを追加することで、低電圧動作にできることがわかっています。

 

この改造により、入力電圧にも安定した内部電圧を供給することができるようになりました。

仕上げ

最後に、電源の状態と、出力を確認します。

電源状態(一次側)

電源のリップル状態を確認します。

通常の変動範囲内であることがわかりました。

 

電源状態(二次側)

同じ様に二次側も確認します。

フィルタがはいっているので、とても良好です。

周波数特性

最後に周波数特性を確認します。

20Hzから20Kまで+/-1dBであることが確認できました。

 

まとめ

Class Dのアンプは、小型でハイパワー。低歪のアンプですので、使い方次第で驚くような音をかもし出すことができます。一方、多機能で高密度の為、故障が少し起こりやすくなることも事実です。

 

今回の動作不能は、電源回路が固定発振であり、電圧が上昇した際に、Class Dの制御回路に負担がかかってしまったと考えています。

同じような問題でお困りの方は、当方まで、ご相談ください。

 

使用した機器

DAC(D10)

測定用にはD10というDACを用いています。
現在は、後継機のD10Sがあります。

TOPPING D10s DAC Mini USB DAC XMOS XU208 ES9038Q2M DSD256 PCM 384kHz Hi-Res オーディオデスクトップ オーディオデコーダー (ブラック)

正弦波もとてもきれいです。

 

オシロスコープ(SDS1102)

使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ

廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。

OWON ハイコストパフォーマンスデジタルオシロスコープ 1Gs/s 100MHz帯域 薄型軽量 SDS1102【国内正規品】【メーカー直営3年保証】【日本語取扱説明書対応】

FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。

波形貼り付けもPCにUSBで可能です。

奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。