DAC-41が再び流れ着きました。早速確認を始めたところなにやら不可解な改造がされていることがわかってきました。さてその改造の影響とオリジナルとの違いを確認後、いつものピアニシモカスタマイズをおこなってきっちり仕上げてみたいと思います。
仕様
DAC-41は、その当時では小型の部類になるでしょうか。
8x14cmのサイズでDigital Inputも2つ出力も2つ備わっています。
DAC-41は
- 20Bits DAC
- Dual TDA1541A
- Digital Input x2
- Analog output x2
とてもシンプルです。
状態確認
出力の状態を確認してみました。最初は安定していたのですが、徐々にすごいノイズ。なにやら問題を抱えているようです。
これは、電源ノイズではなくて、D/A変換が誤動作している様に見えます。
さて、原因がつきとめられるでしょうか。
基板状態
内部を開けてみると
なにやら基板が追加されている様です。
外してよいか、慎重に進める必要があります。
どうやら懐かしい、ロジックIC(フリップフロップ HC74)が追加されています。
まず、追加基板の配線を確認してみます。
(はんだ付けや配線がプロの仕事ではないですね。)
改造の配線を回路図にしてみると
(PR,CLR等は省略しています)
どうやらデジタルICの出力を少し遅らせる(1Clock)工夫がされています。
オリジナルでも、問題なく動作するはずなので、まずは取り外してみます。
不思議な改造群
基板をよく見ると他にも少し不思議な改造がいくつも。
電解コン->セラコン悪影響
このコンデンサ群(6個)は、デジタルフィルタICの電源用のコンデンサです。
マニュアルの値は、標準で装着していたコンデンサの値と一致していました。
一旦もとに戻してみます。(電解コンへ戻すと、電源の発振がなくなりました)
インダクター>フィルタの悪影響
電源状態を確認してみると
標準は100uHのインダクタのところ、フェライトビーズ等の高周波対策品に交換されています。
特に右側の電圧が暴れているのがわかります。
いくつか電源を確認してみると、電圧が少し標準より低いことがわかります。
もとに戻してみると、電圧は、きっちり標準値になり
不安定な電源も安定するようになりました。
不用意にインダクタの容量を大きく変更するのは、危険であることがわかります。
出力段回路
どうもOpAmp周辺の抵抗値が一箇所変わっています。
どの様な意図なのかを確認して、オリジナルに戻すか判断します。
写真とパワポを駆使して
回路図を起こしていみると。
苦労して得た回路図は、とてもシンプルでした。
修正されていたのは、初段のゲインを上げる調整でしょうか。
ただ、それでも一般的な回路では、入力にもう一つ抵抗が必要なのですが。
出力のOpAmpの回路がDuo β回路に似ていますが違いそうです。
今回の変更は、出力レベルを上げるためと考えられますが、高周波の補正が入っていますので、オリジナルが良いと考え、オリジナルの1.5kにすることにします。
その他の間違った改造
出力の低負荷補正用の抵抗が、LとRで異なっていることもわかりました。
これもオリジナルに戻します。
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一通り、オリジナルに近い状態になったのが確認できたので、ピアニシモカスタマイズが始められます。
カスタマイズ
カスタマイズはいつもながらのアイティムと
- 電源強化
大元の電源回路のメインコンデンサ容量を見直し、安定化を図ります。 - 電源高調波対策
高分子や、チップコンデンサを用いて、高周波対策を行います。 - 高分子カップリング
出力のカップリングは、高分子フィルムで単一化。低歪位相ズレ対策します。 - ±5V電源
OpAmpやデジタル電源は、超低ESRのコンデンサ、セラコンを用いて安定化 - 出力インピーダンス
出力インピーダンスの標準は1kでしたが、これを200Ωに下げ、ケーブルの影響や、比較的低めの入力インピーダンスアンプ対応も考慮。 - OpAmp
muses8820を装着し、落ち着きのある大人のサウンド仕様へ。 - レギュレター放熱対策
レギュレタと板金を熱伝導シートで熱結合して、放熱効率アップ
レギュレターが熱かったのが、人肌程度の温度に。
出力インピーダンスは、他のナカミチが100Ω程度を考慮し、設定しました。
これらを施し、ピアニシモ仕様に仕上げます。
電源カスタマイズ
一次ノイズ
このDAC-41は、レギュレターを中心に電源を生成していますので、電源が発生するノイズはまず気にしなくてよいのですが、一次側は、少しスパイクが目立ちます。
これらは、デジタルアウトプットの機器等のノイズが大きく見えてしまいます。
チップコンデンサ等を用いて
抑え込みます。
出力確認
一通り整備ができましたので、確認の意味も含め出力波形を観測してみます。
微小信号
オリジナルでは、出力インピーダンスが高いのと、高調波の反射を抑制する数百pFのコンデンサが足りないことがわかってきました。
これらの高調波は、伝送経路に高周波のインピーダンスが高いことが要因で有ることがわかってきました。ほんの僅かのコンデンサを追加することで、高周波のインピーダンスを下げターミネートが可能で反射波を抑えることができます。
100kHz以上の帯域ですので、まずは問題は無いのですが、車内のノイズや、ケーブルが長い場合、効果があると考えています。
周波数特性
最後に周波数特性を測定し、カスタマイズの確からしさを確認します。。
ワイドフラットで有ることがわかります。
まとめ
仕上がりは、追加された基板も取り除きスッキリ。
無理な改造は行わず、末永く使っていただけるようにまとめました。
muses8820との相性も良く、透明感のある大人の落ち着いた、サウンドに仕上がりました。
ご 閲覧ありがとうございました。
DAC-41の基本整備は、下記よりご覧になれます。
ナカミチ DAC-41 整備録① 状態確認 - pp audio blog
また、他のDACの測定やメンテナンスも、ご覧になれます。
DAC カテゴリーの記事一覧 - pp audio blog
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。