ナカミチのDACの中でも振動アイソレーション等、その当時の技術をふんだんに投入した1000DACが流れ着きました。
この100DACや1000DACは、内部のDAC LSIを4つ使っています。
少し回路を追いかけてみると、改善点がいくつか見えてきました。
また、どうしてもビンテージクラスは、電源系のメンテナンス、特にコンデンサの交換が必要になってきます。きっちり電源のメンテナンス、高調波対策を行い、末永く使えるDACへと、仕上げてみたいと思います。
はじめに
100DACの仕様の引用になります。
100DACのシャシーは、シルバーでしたが、1000DACには、ブラックボディの高級感ある仕上げを採用しています。
外観
状態がとてもよく、少しの清掃できれいになりました。
出力確認
出力の状態で、DACの健康状態が概ね把握できます。
とても良好なのがわかります。
カスタム・メンテナンス
100DACの経験がありますので、カスタム・メンテナンスを早速行いました。
- 電源メンテナンス
電解コンデンサ(液漏れあり)の交換、低ESRの電解コンや高分子等、負荷、
ス パイクノイズの状態により交換します。 - 電源シールドカバー防錆
電源のシールドカバーは、ゴムの硫化水素によりサビがでています。
サビを落とし、クリアで防錆処理をほどこします。 - 電源高調波
電源には、チップセラミックで基本的な高調波を抑えます。 - デジタル回路電源
このアンプのデジタルICには、電源の干渉対策の為、個々にインダクタとコンデンサが装着されています。コンデンサを高分子に交換することで、スパイクノイズを低減します。 - DAC電源ピン強化
DAC ICの電源ピンにパスコンを追加します。 - 出力内部ケーブル(RCA出力)
出力のケーブルを2芯シールド化、GNDの強化とノイズ対策を狙います。 - パネル アース強化
デジタル入力の端子とGNDがきちんと接触するよう、内側の塗膜を剥離
ネジは、クロームメッキ製で、きちんとした導通を確保します。
電源状態(一次側)
電力が比較的小さいので、
高分子+チップセラコンで、きちんと抑え込むことができます。
電源状態(二次側)
デジタル用とアナログ用のダブルの電源を搭載しています。
同じような特性ですので、同一仕様でまとめました。
ここで、注意は、GNDが共通で無いところです。これにより、後々なやまされることになります。
DAC IC差動動作
ライン出力は良好なのですが、どうもGNDにデジタルノイズがみられ、その原発をさぐるために、DACまで、トレースしてしまいました。
この1000DAC(100DAC)は、2ch DA LSIを片側に2つ、合計4つ搭載しています。
回路の構成接続を解析し、略図にしてみました。
ひとつのDACのLとRの出力を加算し、分解能をアップしています。
またチップをダブルで使い、差動信号を作り出し、OpAmpの差動増幅回路でノイズ、歪を打ち消す設計思想と思われます。
かなり思い入れのある回路であることが読み取れます。
DAC差動回路確認
OpAmpの差動回路の抵抗は、教科書どおりの全部同じ抵抗値で、インピーダンスも同じはずなのですが、
OpAmpの差動回路入力の電圧に差ががります。
せっかくの差動回路なので、同じ電圧にできなか、調べてみましょう。
そういえば、教科書通りのOpAmpの差動回路は、入力のインピーダンスが異なることがわかっています。
OpAmp差動回路入力Imp.について
同じ抵抗値なのですがプラス側はGNDにマイナス側は、OpAmpの出力に繋がっています。
わかりやすく、入力電圧を±1Vとして計算してみると
電流が3倍異なることがわかります。すなわち、impedanceは、1:3になることがわかります。
このimpedanceの違いが、どうやら電圧入力の差の原因のようです。
OpAmp差動 Imp共通化
教科書とは、異なりますがOpAmp外部抵抗を+側と-側で3倍の関係にするとimpedanceを共通にすることが出来ます。
上手のような比率にすれば、impedanceを共通にできます。抵抗値がことなるので、ちょっと気持ち悪いですが。
また、オリジナルのimpedanceの平均と合わせることも重要になります。
それでもまだ、電圧がピッタリと一致しません。
OpAmp入力電流経路
原因を探ると、
どうもGNDをのループが弱い、リターンパスが確立していないのがポイントの様です。
DGNDとAGND分離の影響
このDACは、デジタルとアナログの電源が別れています。
GNDが分離しているので、差動の信号の電流ループ、リターンパスが、芳しくないことがわかりました。
その影響で、
デジタル部のGNDの電位のフレがどうもアナログのGNDをふらつかせているようです。
また、OpAmpの外部抵抗も数百Ω程度と、比較的小さく電流も大きいのが関係しています。
DAC LSI 差動電流パス確立
まずは、差動通信の信号の基本である、差動ラインで電流ループを確立するのを狙います。
差動のターミネーション抵抗を追加します。
これにより、DACの出力電流を終端抵抗に流す事によって、OpAmpへの電流を小さくすることができます。
だいぶ改善することができました。
出力へのノイズは、どうやらOpAmp入力端子から、電源へ高調波が漏れてしまうことにあるようです。
OpAmp一つで正側と負側の条件をいっしょにするのは、これが限界です。
Instrumentation OpAmp
OpAmpの電圧フォロアと差動を組み合わせると、入力インピーダンスを高くすることができます。
3つのOpAmpが必要になりますが、ワンパッケージ品があります。
これを用いると回路がとてもシンプルになります。
基板の改造も、RefのGNDを追加するだけで可能になります。
これにより、差動回路の電流設定も、ゲインの可変も簡単になります。
まとめ
今回は、DACの完全差動化を行ってみました。これにより、歪率等の改善が可能です。
出力波形
最後に出力波形を確認します。
デジタル回路の高調波が少なくなっているのがわかります。
また、ゲインも少しアップし、最大出力電圧がを1.5Vから2.5Vに改善。
これでSN比も改善し、システム全体での情報のロスを低減することが可能です。
周波数特性
周波数測定を確認することで、トータルの性能をみることができます。
サンプリング限界まで、フラットであることがわかります。
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いかがでしたでしょうか。
今回は、時折、OpAmpの差動回路の問題点が影響してしまっている回路を見かけることがあります。それらの原因、要因を取り除き、本来の性能を発揮するカスタマイズを施してみました。
本来の差動動作DACの真価が聞こえてきます。末永く、楽しめるDACになったと思います。
これまでのDAC
また、今まで測定した、DACは下記よりご覧になれます。
DAC カテゴリーの記事一覧 - pp audio blog
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。