内部のコンデンサから液漏れがあり、動かなくなったPA-302が流れ着きました。
洗浄を施し、液漏れコンデンサを交換しましたが、リモートをOFFしていても過電流が流れる状態。
それでも、きちんと直して、ピアニシモ仕様に仕上げてみたいと思います。
はじめに
PA-302は、80Wx2のシンプルな、ピュアアナログパワーアンプです。
PA-302のスペックは、前回のメンテナンス備忘録に記載されておりますので、ご参照ください。
状態
底板を外すと基板の状態が分かります。
絶縁紙が少し濡れているのが分かります。
絶縁紙を取り除くと、基板の銅箔が酸化してところどころ黒くなっています。
拡大してみると、
電解液が漏れ出しているのが分かります。
部品面を確認すると
液漏れ範囲が、結構広いことがわかります。
トランジスタの放熱板の下にも、染み込んでいます。
ここは、取り外してきれいに洗浄しないと、電解液が残ってしまい、再び故障してしまう可能性があります。
ヒートシンクは、洗浄後、研磨し
ピカピカにしてから、取り付けます。
銅箔が黒くなっている箇所も
部品を取り外して、洗浄、研磨します。
配線のケーブルにも、電解液が染み込んでいますので、
交換します。
通電確認
洗浄後、コンデンサ等を交換しましたが、過電流が流れ、動作しません。
不具合解析
- 抵抗値測定
電源ラインとGNDの抵抗値を測定します。
案の定、数Ωしかありません。
メインのスイッチングTrが壊れていると想定できます。 - スイッチングを禁止
スイッチング制御用のTr x2 を取り外し、スイッチング動作を禁止に。 - 故障Trの調査
スイッチングトTrを短絡状態が復旧するまで、一つずつ取り外します。
今回は、スイッチングTrが一つ壊れていました。 - 仮通電
制御用のTrを取り外した状態で、一度通電し、スタンバイ状態になるか確認 - スイッチング制御Tr 再実装し通電
スイッチング禁止の為取り外した制御用Trを再実装
またもや、過電流がながれました。
どうも制御用のTrが壊れると、スイッチンTrも壊れてしまうことが。 - スイッチング制御Tr 交換
2つあるTrを両方とも交換します。
バランスが狂っていることもあるので、必ず2つ交換します。 - 通電確認
やっと、通電確認です。
今回は、この2箇所の問題で動作しはじめました。
多くのPA-302は、この不具合方法で概ね動作するようになりました。
注意は、ただ通電だけでは、修理は、まだまだ完了にはなりません。
動作確認(基本)
早速動作確認をおこないました。
音が出るかどうかの確認の前に、最低限次の確認が必要です。
そうでないと、スピーカを壊したり、アンプの回路を損傷させてしまう場合があります。
- 電圧確認
電力用、電圧用、OpAmp用電源電圧を確認。
この確認は、電圧の範囲がスペックに入っているか確認します。
今回、電力用の電圧のバランスがずれていることが発覚。
いくつか、回路を調べると、半田の接触不良があることが分かり、修繕し
電圧のバランスが通常範囲になりました。
当方では、このときの電圧を、記録しています。 - 出力もれ電圧
出力に漏れ電圧が出ていないか、確認します。
時折数vの電圧が出ている場合があります。今回は、大丈夫でした。 - 基本波形測定
基本波形(1KHz)を印加、出力波形を観測します。
これで基本動作確認は完了です。周波数特性も測定する場合もあります。
微小信号
基本動作での波形は、こんな感じでした。
拡大している波形(微小信号)なので、乱れている様に見えますが、PA-302の標準状態です。
同じ条件で、他のメーカを測定すると、正弦波が読み取れないくらいノイズだらけのことが多いです。特に海外のアンプは、あまり状態がよいとは言えません。
(ただ、可聴範囲外の高周波なので、大きなノイズとして聞こえるのは稀です。)
カスタマイズ
今回も、電源強化、高調波を施し、ナカミチの魂を生かしてみました。
- 電源強化
超低ESRの電解コンを始め、高分子コンデンサも採用 - 高調波対策
高分子コンデンサ、チップコンデンサを用いて波形を観測
ノイズの低減効果が確認できた値、素子を採用 - トロイダルコアチョークコイル
電力用の電源のコイルにトロイダルタイプを採用。
漏れ磁束が小さく、オリジナルコイルよりESRが小さく効率よく
エネルギーを蓄積します。 - -6dBゲイン調整
OpAmpのゲインを-6dBすることで、ハイレベルの入力に対応。
入力のゲインVRでロスするエネルギーロスを、VRの絞りを減らすことで改善 - OpAmp電源電圧
OpAmpの電源は20Vからmusesの推奨電圧の16Vへ変更 - 高分子カップリング
高分子のフィルムコンデンサを用いて低歪の音を追求。 - 密閉 VR
経年変化でも接触不良を起きにく、い密閉型のVRを装着。
きっちりピアニシモ・カスタマイズができているか、一つずつ確認してゆきます。
入力ノイズ
入力ノイズは、一次側や二次側の対策の相乗効果がみられます。
一次側は、いつもの約0.3V程度になり、カスタムが正常に行われていることがわかります。
二次側(電力用)
初期状態でも、既に低ESRのコンデンサに交換済みで、良好でした。
チョークコイルをトロイダルコアに交換、チップセラコンによりスパイクもなくなっています。
二次側(電圧用)
電圧用は、フィルタが割愛され、スパイク少しありますが、低ESRの電解+セラコンにより
良好になりました。
出力確認
最後にピアニシモカスタムの確認として、出力信号を確認し、カップリングを交換します。
微小電圧
PA-302はオリジナルでも優れたSN比を誇りますが、GNDの接続係数が大きめの為、高調波が少し目に付きます。
こだわり仕様で、高調波も抑えることができました。
周波数特性
容量を変更し、低域も-0.5dB以内、高域もしっかり伸びており、かつ高調波抑制のためでしょうか、超高域が抑制されているのがわかります。
まとめ
実装は、とてもオーソドックスです。
必要な箇所は、一回り大きな素子に交換し、放熱向上と耐久性をアップしています。
決して、無理に大きな素子を装着せず、カーアンプに必須の耐振動にもしっかり、対応しています。
電源側の電解液が染み込んでいた絶縁紙も
交換しました。
外見もきれいに整備し
端子台を洗浄。ネジも耐久性のあるクロームに交換して、完成です。
最後に
****
このアンプ PA-302は、個体差が小さく、ほとんど同じ特性を得ることができます。
リファレンスのアンプとして、最適です。
海外のパワフルなアンプが好みの方も、一度このアンプと比較してみても面白いと思います。ダンピングファクター1000倍という性能から得られるパワフルなサウンドを醸し出してくれます。
また、ワイドな再生帯域で、フルレンジもそのユニットの素性を引き出します。
さらに、超低ノイズ、低歪でツイータも透き通る音を醸し出します。
PA-302シリーズは、内部に余裕がありますので、状態のよいPA-302を見つけられたら、ぜひ、手にしてみてください。ご自分で、カスタムしても良いですし、難しかったら、当方まで、お気軽にメールでお願いします。
(迷惑メール防止の為、メールアドレスはプロフィールご参照ください。)
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カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用した機器
DAC(D10)
測定用にはD10というDACを用いています。
現在は、後継機のD10Sがあります。
正弦波もとてもきれいです。
オシロスコープ(SDS1102)
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。