5chのデジタルパワーアンプ Kicker IQ 1000.5のメンテナンス整備です。
このアンプは、昨年メンテナンスを始めましたが、安定させることができませんでした。色々調べてゆくとわかってきたことが。
同じアンプをお使いの方も同じ様に苦労されている方がいらっしゃるかと思います。
その解決のヒントになればと、現在の整備状況を綴ってみたいと思います。
はじめに
このIQ1000.5は、トータル1000W(@2Ω負荷)の5chアンプです。
外観
電源を入れると、ブルーのストライプが光ります。
仕様
デジタルアンプの高効率により小型のボディからトータル1000Wを引き出します。
また、DSPが内蔵され、タイムアライメントや、クロスオーバ等もソフトウェアで設定できます。
内部
内部を開けてみると(写真は、メンテナンス済み)電源が2つ搭載され、シンプルな構成です。
デジタルフィルタは、4chは、小型のコイルですが、SWは、大型のコイルが装備されています。
状態確認
当初、当方に流れ着いた時、電源が入らない状態でした。
初期状態
調べてゆくと、サブウーファ用の電源が壊れていることがわかりました。
スイッチング素子と、制御信号の制限抵抗が壊れていることがわかりました。
部品交換し、電源が入ることが確認できました。
電源状態(4ch側)
4ch側をみてみると
とても良い波形。に見えるのですが、一般的な波形と異なります。どうも、トランスの能力以上(磁気飽和)のパルス幅を印加しているように見えます。
制御側(Gate)の信号も、DeadTimeの時間でOffしているように見えます。
電源状態(SW側)
サブウーファ用も見てみます
こちらは、もっと極端で、スイッチング素子がOFFしているにも関わらず、電圧が残っており、見た目OFFしている時間が極端に短くなっています。
電源制御系
基板の配線を追って制御系を確認してみました。
2系統ある電源の制御信号は、共通。(できれば、それぞれにコントローラがほしいところです。)
出力電圧のFBがあるはずなのですが...とうしても見つけることができませんでした。
フィードバックなしで、固定パルスで電源を制御していました。
トランスが飽和しているので、FBを仮に接続してみました。
電源カスタマイズ
いろいろ調べてみて
- 消費電力が大きい
アイドル状態で、100W(4.5A)程度流れてしまう。 - 電源トランスの発熱が大きい
トロイダルコアのトランスが結構発熱します。 - トランスが飽和している
トランスの動きがどうも飽和している状態に思える。 - 低電圧制御が見当たらない
スイッチング電源の一定電圧の制御が見つからず、固定発振で電圧生成の模様
ということで、まずは、電圧を一定にするようにフィードバックを追加してみました。
電源状態(4ch用)変更後
電圧のFBをついかしてみると
いつもの見慣れた波形が表れました。
電源状態(SW用)変更後
こちらも、しっかりと制御できています。
変更前と後とを簡単な比較表を作成してみました。
以前は、立ち上がり時に大きめな電圧が印加されていましたが、それもなくなり、アイドル電流も小さくなり、トランスの発熱も少なくなりました。
つづく
電源は安定したのですが、Class Dの出力素子が10分ほど経過すると異常発振してしまい過電流プロテクトが働いてアンプが止まってしまいます。
いくつか試しに素子を交換してみましたが、まだ安定することができていません。
なんとか、安定させて、1000Wを誇るアンプをしっかり蘇らせてみたいと思います。
カスタムナカミチアンプ
ppAudioでは、ナカミチのカーアンプを数多くカスタム・メンテナンスしております。
稀に、オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがありますので、ご確認いただければ、幸いです。
使用した測定器
使用した機器
DAC(D10)
測定用にはD10というDACを用いています。
現在は、後継機のD10Sがあります。
正弦波もとてもきれいです。
オシロスコープ(SDS1102)
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。