前回PA-304S 電源スイッチングの安定化ができましたので、高調波カスタマイズを行い、ピアニシモ仕様に仕上げたいと思います。
電源ノイズ
電源ノイズの改善がわかりやすいように重ねてみました。
入力ノイズ
入力は、うねりがあったものがなくなっています。一次側は、2V強あったものが0.4V程度にすることができました。
二次側(電力用)
リップルをかなり低減できていることが分かります。
二次側(電圧用)
高調波を抑えることができているのが確認できます。
AMP基板側電源
効果がはっきりと分かります。ノコギリのような形が殆ど消えています。
OpAmp電源
オリジナルのOpAmpの電源は、20mV程度ですが、ノイズが大きめに見えます。
これを測定限界まで低減します。
出力への影響は、小さいですが、安心感があります。
オリジナルのOpAmpの電源は、温度が上昇し、基板が焼けてしまうことがあります。
焼けた基板は、銅箔が剥がれやすく、トランジスタをしっかり支えることができにくくなります。
ハトメで、スルホールを形成し、放熱能力の高い大きめのトランジスタへ交換して対応します。これで、基板が焼けることはなくなります。
(写真は途中経過になり、最終的には、電圧降下用の抵抗も倍の熱容量のものと交換。)
出力信号
微小出力
高調波ノイズがきになった出力波形ですが
大きく改善されていることが分かります。
周波数特性
周波数特性の確認も行います。
オリジナル特性をそのまま継承しわずかに改善できました。
GAIN調整用のシールドボリューム採用と、高分子フィルムの効果です。
まとめ
さて、基板の状態はどんな感じになったでしょうか。
スッキリとした仕上がりになっています。
- スイッチング電源の安定化
スイッチング素子のオフ時間をきちんと制御し、コントローラ制御ループの安定化を実現。 - 大型コンデンサの低ESR化、容量アップ
無理に容量をアップしてしまうと高周波のリップルがかえって悪化してしまうことがありますが、きちんと効果を確認して、適切な容量を選択しています。 - 高調波対策
各電源に合わせた、容量のチップコンデンサや、ラジアルリードのコンデンサを用いてスパイクノイズを低減。
こればかりは、実際に波形を見ないと、適正な値かどうかは、わかりません。
リップルの大きい箇所に、闇雲にコンデンサを取り付けると、多くの場合逆効果になります。 - 放熱対策
抵抗やトランジスタの容量をアップして、放熱効果を上げ、局所的な熱の上昇を抑えます。 - 信号経路改善
超低歪、低消費電力のOpAmpを採用。
カップリングには高分子フィルムを使い、高域補正のコンデンサ無しでシンプルにしています。
音質への影響の少ないコンデンサはオリジナルを使い、改善すべき所に的を絞って行っていることが、わかっていただけたのではないでしょうか。
末永く、使っていただける耐久性と、ピアニシモがしっかり聞こえる、低ノイズ、低歪のアンプに 仕上げることがで来たのではないでしょうか。
この音の違いを楽しめるのは、オーナー様だけの特権です。
このアンプの初回の状態確認は、下記よりご覧になれます。
ナカミチ PA-304S カスタム・メンテナンス #1 ('21 5) ① 状態確認 - pp audio blog
また、もう一台のメンテナンス状態は、下記よりご覧になれます
PA-304 カテゴリーの記事一覧 - pp audio blog
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。