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ナカミチ PA-304S カスタム・メンテナンス #1 ('21 5) ① 状態確認

PA-304Sのカスタム・メンテナンスが2台行う機会に恵まれました。PA-304Sは、電源のスイッチング素子にFETを使用したアップグレードバージョンです。
状態の確認を行った際、一台消費電流が通常の倍あり、かつ、安定しません。
さて、その原因を究明できるでしょうか。また、きちんと合理的に直すことができるでしょうか。

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 はじめに

ナカミチPA-304は、その系列PA-202やPA-302の中でも使いやすく人気のアンプです。特にSバージョンは、めったにお目にかかれませんし、状態の良いのも少ないです。今回のPA-304Sは、とても状態が良さそうです。

基本仕様

PA-304Sは45Wx4chの使いやすいアンプです。電源の高効率化を図りFETを採用しています。
また、ノーマルのセラミックコンデンサをメタライズドフィルムコンデンサを多く採用している、PA-304のアップグレード版です。

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(PA-304Sの仕様を調べてもなかなか入手することができません)

またチョークコイルも、一般より一回り大きいものが使われています。

外観

外観は特に著しい損傷はなく、状態はとても良さそうです。

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内部状態

PA-304は、熱マージンが厳しく、電解コンデンサの液漏れ等が発生しやすいのですが

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とても良い状態で、液漏れ等は、全く見受けられません。
OpAmpの電源部も少し焼けが見られる程度で、とても良い状態で使われていたことがわかります。

電源状態

状態がとても良いので、通電して電源の状態等を確認します。

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一次電源

入力ノイズ、一次側の状態はとても良好です。

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ですが、少し電流が安定しません。この原因は、後でしっかり究明したいと思います。

二次側(電力用)

二次側の電力用は、スパイクもなく良好です。

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少しリップルが大きそうです。電流が大きいのが要因していそうです。

二次側(アンプ基板側 電力用)

アンプ基板への電力供給ポイントも確認します。

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特に大きな問題はなさそうです。きっちり改善できる状態です。

二次側(電圧用)

電圧用も確認します

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いつもよりも振幅が小さいでしょうか。

二次側(アンプ基板 電圧用)

アンプ基板側の電圧は、低電圧回路を介して接続されていますので、

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リップルは、誘導ノイズが少し確認できるレベルです。

OpAmp電源

OpAmp電源は、電源回路から距離があるので、

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ノイズが確認できます。これも、通常状態レベルですので、あとできっちり改善します。

出力状態

-80dB/1kHzの微小信号を再生して確認します。

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少し拡大が大きいので、リップルが見えますが、100mV以下ですので、通常状態です。

消費電流大きめ?

少し消費電流が大きめです。

PA-304は、1.5~1.8A程度ですが、このアンプは、2.0A~3.0A Overになります。

電流も最初安定しません。どうも電源のスイッチングが安定していないように感じます。

PA-304S電源回路

PA-304はプッシュプルのスイッチング電源を採用しています。このPA-304Sでは、そのスイッチング素子をFETにしている為、FETのGateのレベルを確実にOFFにする為

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スイッチング素子のゲートがロジックICの出力と同じトーテムポール構成になっています。

電源制御波形観測

電源がどの様にスイッチングしているか、観測してみました。

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どうも初段のTrがきちんとOFFできていない感じです。

ONしているのが一瞬で、あとは、引きずられてしばらく経過してやっとOFFしています。

もう一台は、電流が多少安定しているので、そちらを確認してみると

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引きずられてい時間が短く、高い電圧のON時間が長くなっています。

もっと早くOFFさせて上げる必要がありそうです。

改善変更

もともとコントローラ(uPC494)の出力がオープンコレクタなので、積極的にOFFするには、プルダウン抵抗が必要です。

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ONの電圧が低くなりますが、5V程度あれば十分ですので、電源電圧の半分程度の抵抗値で改造してみます。

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以前よりHighレベルは、低くなりましたが、幅が広がり、OFFの立ち下がり時間が短くなりました。

電源電流も

 3A → 1.5A

に落ち着きました。

 

つづく

今回は、トランジスタのロットによるリーク電流の違いにより、スイッチングの制御安定しないことがわかりました。PA-304Sは、この修正を行ったほうが良さそうです。

もし、お手元にPA-304Sをお持ちで、少し発熱が大きいと感じられた場合は、電流を確認してみてはいかがでしょうか。無信号状態で2A以上流れているようであれば、修正を検討してみてはいかがでしょうか。放置すると、貫通電流が大きくなり電源素子を炒めてしまい可能性があります。

電源が安定しましたので、早速高調波対策を施して、ピアニシモ仕様のアンプに仕上げてみたいと思います。

matsubaraharry.hatenablog.com

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これまでのPA-304のメンテナンスは、下記よりご覧になれます。

 

PA-304 カテゴリーの記事一覧 - pp audio blog

 

カスタムナカミチアンプ

オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。

ヤフオク!

 ヤフオク! ナカミチメンテナンス 出品リスト

 

使用した測定器

使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ

廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。

FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。

波形貼り付けもPCにUSBで可能です。

奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。

 

OWON ハイコストパフォーマンスデジタルオシロスコープ 1Gs/s 100MHz帯域 薄型軽量 SDS1102

 

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