雑音が出てしまう、ソニー パワーアンプ XM-3046が流れ着きました。
手元で確認してみると、4chとも音は出ています。目立ったノイズも確認できませんでした。ですが、測定してみるとC/Dchだけ大きなノイズが測定できました。
そんな原因を交えながら、アンプの修理を綴ってみます。
はじめに
このXM-3064は、1Ωおもドライブできるパワーアンプで、小型ながら90W(4Ω)x4chを引き出します。
スペックも素晴らしく、0.005%の低歪み率、周波数帯域もとても広いです。
パネルのトップには、ネットワークの切り替えとゲインボリュームが搭載されています。
入力、出力は、至ってシンプル
端子ネジは、真鍮製で、こだわりが感じられます。
とても使いやすそうです。
特徴
- 1Ωまでドライブできる低インピーダンス出力
ブリッジ時は240Wを引き出す - LowPass/HighPassフィルタ搭載
LowPassは、50/80Hzを切り替え設定可能 - ブリッジ対応(オートブリッジ)
ペアのチャネルの片側をオープンにするだけでブリッジ動作可能 - 高出力をサポートする冷却FAN搭載
内蔵FANで、防塵を考慮しつつ放熱効率を向上
状態確認
一通り、RCAの入力、電源、出力の端子台を清掃を行い出力波形を確認しました。
A/Bはきれいな波形が確認できましたが、C/Dは、ノイズまみれです。
ですが、スピーカを接続しても、雑音は聞こえません。少し不思議な状態です。
電源状態確認
アンプが正常に動作しているか、電源の状態を確認してみます。
電源は、標準的なプッシュップルのスイッチング回路で、二次側は、A/BとC/Dの供給を分離しています。
一次側
一次側は、スイッチングノイズが見られますが
とても良好な状態です。
二次側
チョークコイルが装着されていませんでしたが
とても良好です。
メンテナンス
今回は、不具合の修理を基本とするメンテナンスで、高負荷の素子の交換を施し、先のノイズの状態が改善するか、確認してみます。
一次側
一次側のコンデンサを、電源用の高寿命、低ESRのものと、超低ESRのものをミックスして交換します。
高調波が小さくなり、かつ、リップル変動が小さくなったのが分かります。
二次側
二次側も、いつものように電源用のコンデンサと交換です。
もともと小さかったですが、微小ですが改善したのが分かります。
入力回路解析
C/DのチャネルのはどうやらGNDの接続がユニークになっているのが影響していそうです。色々調べてみると、このアンプもGNDが、差動入力として扱っています。
これは、ある程度の周波数までは追従できますが、スイッチングノイズ等の高調波は、応答できず、不安定になります。
ホームオーディオでの問題
ここで、入力のGNDが、アンプのGNDと直接つながっていないため、ホームオーディオでは、問題が生じることがあります。
車の場合は、シャシーがコモンアースになり、ヘッドユニットの電位とアンプの電位は、シャシーからの電位として共通化可能ですが、ホームオーディオでは、アースが共通で無いことが多いです。
このアンプを動作させる14.4Vの電源のGNDは、浮いていますし、接続するプリアンプの電位も浮いていることが一般的です。
この様な場合、RCAのシールド側とGNDの間のコンデンサを高周波対応品に交換したり、抵抗を小さめにしてあげると改善が期待できます。
また、機器のGND同士の接続でも改善効果が期待できます。
アンプの入力組み合わせ
このアンプの使い方としては、C/Dだけを使うことは、無く必ずAとCは、入力が接続されます。
測定時、C/Dだけを接続して確認していましたが、C/DのGNDもAのGNDと接続して測定すると
かなり改善します。
微小出力確認(-60dB)
このGNDを接続した状態で、-60dBの信号での状態を確認してみます。
C/Dチャネルは、GNDが遠いので、やはりコモンノイズの高調波が残ります。
また、AよりBが大きく、CよりDの方がノイズが大きいのは、GNDが遠いからと考えられます。
カスタマイズ
当初のノイズの原因は、おそらく接触不良と考えられますが、GNDを少し改善して、安定化を図ってみたいと思います。
C/DもA/Bと同じ様にGNDをコンデンサで接続し、またA/BのGNDとC/DのGNDも高周波で結合します。
微小出力確認(-60dB)
コモンノイズの影響を解消でき、きれいになりました。
周波数特性
最後に周波数特性を見てみましょう。
5~100kHzでも-0.5dB以内で見たことにない、素晴らしい特性です。
まとめ
今回は、ノイズの修繕が目的なので、電源のメンテナンスと、GNDの接続改善にて安定化を図ってみました。
また、カップリングも電解コンデンサでしたが、無電解として、電位逆転による影響を回避しました。
いかがでしたでしょうか。
カーアンプは、ノイズ対策として、GNDをバランス入力としていますが、その分、GNDの結合が弱くなり、コモンノイズの抑制が難しい場合があります。そんなとき、別にGNDを接続すると改善する場合があります。ご参考になれば幸いです。
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。