USAのナカミチPA504のメンテナンスの機会に恵まれました。何度かPA1002をメンテナンスしていますので、内部の方式は同一だと、助かります。
ですが、通電してみるとプロテクトが発生する事象が起こってしまいました。
PA1002も一台プロテクトが発生する原因がわからず、おざなりにしてしまっています。
さて、うまく修正して、いつものピアニシモカスタムができるでしょうか。
はじめに
PA504は、50Wx4を安定的に引き出す、6kgに及ぶかなり大きなボディ。
端子類は、直接リード線を装着できる丸形の大きな端子台が装着されています。
棒端子を使うとより安定した嵌合ができます。
プリアンプはLow/High Pass機能も有し、プリアウト機能も兼ね備えたクロスオーバいらずのアンプです。
ダイナミックバスプロセッサを内蔵したアメリカンサウンドを意識したモデルです。
状態確認
さて状態を確認してみました。時折プロテクトが出てしまい起動しないことがありましたが、騙しながら確認。
周波数特性
周波数特性は、いつもどおり驚くべくフラット。
気持ちいいですね。
微小信号
USAのアンプの傾向として、高調波が目立つことがあります。
このPA504も人には聞こえないレベルですが、高調波が少し観測されます。
電源状態
内部の状態を覗いてみましょう。
基板構成
背面のベース板金を取り除くと内部の基板を見ることが出来ます。
左に、プリアンプ、
中央がパワーアンプ部
右側は、電源部に鳴っています。PA1002と同じ構成です。
電源概略図
簡単な回路図にしてみると
シンプルなプッシュプルのスイッチング電源で、二次の巻線も1系統です。
一次電源ノイズ
スイッチング電源ですので、入力電源にノイズを返してしまうことがあります。
少し確認できます。
二次側電源
大きめのチョークコイルが装着されています。
少しスパイクが目立ちます。
スイッチングが素子がFETの為、急激な切り替えが影響しているのかもしれません。
プロテクト発生故障修繕
分解後、プロテクトが発生して、立ち上がらない頻度が多くなりました。なぜか基板を抑えると、動作することも分かってきました。
小基板差し込みはんだ付け
このUSAナカミチPAシリーズには、アンプ部と電源部に小さな小基板を用いています。
それを、コネクタではなくはんだ付けでダイレクトに接続固定しています。
この作業は、手付による作業で(基本は、はんだ槽に漬けるディップ方式です)少しハンダが多いようです。
ルーペで確認しましたが、多めの半田で、クラックや剥離を見つけることは出来ませんでした。
一度小基板を外し、
制御基板 26Pin x1
アンプ制御基板 22Pin x4
合計114箇所、一旦半田を吸い取ってから、半田してました。
嘘のようにプロテクトが発生することがなくなりました。
やはり、一部に半田の剥離があったと思われます。
これで安心して使える状態になりました。
電源動作解析
どうも電源の動き、ノイズの出方の均一性がない感じがします。
電源制御波形確認
電源の制御を確認してみると
やはり、一次側の電圧波形が対象でないことがわかりました。
プッシュプルなので、一次側の2つの巻線を互い違いにOn/Offする波形は同じに鳴っていなくてはなりません。
どうも、トランスが何かしら影響受けているようです。
試しにチョークコイルを取り出してみると。
ノイズは多くなりましたが、対称になりました。
チョークコイル磁気干渉
想定ですが、チョークコイルと変圧トランスが近接しており、磁気の方向が並行だからではと。
いつも使っている単独タイプのコイルに変更
磁気が直交するので、さてでどうでしょうか。
きれいに対称波形になりました。
理想的なスイッチング波形になり、安心してカスタマイズへ進めます。
ピアニシモ・カスタマイズ
やっと電源が安定したので、二次のピアニシモカスタマイズを実施してみました。
しっかりスパイクが抑え込むことが出来ました。
電源の安定化も行えたのが良かったのではないでしょうか。
いつものピアニシモ処理で、スパイクの抑え込みがでそうです。さらに、一次側や、OpAmpの電源等のスパイクノイズを進め、出力の高調波ノイズ低減へと繋げたいと。
つづく
今回プロテクトの誤作動と、スイッチング電源の動作の動きの改善を行い、ピアニシモ処理の目処も立ちました。
一次側の少し大きなカスタマイズが残っています。
引き続き、進めて、またレポートしてみたいと思います。
さて、出力の高調波ノイズは、どこまで低減できるでしょうか。
続編は下記にてご覧になれます。
USAナカミチ PA504 カスタム・メンテナンス② - pp audio blog
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カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。