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オーディオと電源回路 ピアニシモを聞くために

ナカミチ PA-2004 カスタム・メンテナンス ②

電源の一連のメンテナンスをおこなったPA-2004ですが、どうしても、電源トランスの鳴きがきになります。巻線が浮いているところがあるならばと、エポキシ樹脂で固めたのですが、改善は認められたものの、大きな変化はありませんでした。

原点に戻り、電源の制御波形を観測してみると、改善点が見えてきました。
そんな改善方法と、最終仕上げを綴ります。

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おさらい

これまで、電源のノイズ対策や、信号系と電源系のGND接続を改善することで、出力の高調波を抑えました。

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ですが、電源トランスからの”チリチリ”という鳴きが収まりません。

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トランスのエポキシ浸透や、銅箔のシールドでも、僅かな効果しか得れれません。

 

電源安定化

色々工夫しても僅かな効果に留まってしまうので、もう一度電源の制御系をみてみることに。

二次電源の特色

二次電源のリップル波形を良くみてみると、不自然な波形です。

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スイッチングの深さが安定していません。

 

スイッチング電源の制御信号と実際のFET(スイッチング素子)の実制御信号を確認してみると(少し電気回路の説明になりますが、ご了承願います)

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大元の制御信号は、一瞬しかオンしていないのに、スイッチング素子のオン時間が長いことがわかりました。

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これは、実際の制御信号が、途中信号伝送用トランスのコイルの働きににより、引き伸ばされていることがわかりました。

このコイルの働きの影響で、制御ICから十分な期間のスイッチングタイミングを送ることができなくなっています。

電源制御安定化

信号の伝送トランスに蓄えられたエネルギーを程よく放出する回路を追加すれば、対策できそうです。

トランスの出力に抵抗を追加すると

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しっかり制御信号のオンしている期間がわかるようになりました。

比較してみると、

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PWMの信号の幅が明確です。

制御系も安定して、トランスから聞こえていたチリチリという音もなくなりました。

このチリチリという音は、トランスの電流がPWMの周期100kHZで、数回の間隔で変化し、人の耳で聞こえる音となったようです。

電源状態再確認

さて、制御系が安定したので、確認の為、電源の状態をみてみます。

一次側

振幅の大きさがバラバラだったのですが

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きれいに、しかも、かなり小さくなりました。

二次側

二次側も同じ様に振幅が安定していませんでしたが

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きちんと安定しています。

周波数特性

最後に、周波数特性を確認します。

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カップリングが47uFとおおきめなので、ほとんどDCまでフラットです。

とても良い特性ですね。

 

まとめ

USAのアンプによく見られる電源のノイズや不安定の原因の一つであるPWMの不安定を見つけることができ、きちんと直すことができました。

放熱対策

出力段の前段の電圧プッシュプル用のトランジスタが少し温度が高いことがわかっています。今回は、放熱フィルムをつかって対策しました。

 

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沖電線のポリミド絶縁を施した、銅箔放熱フィルムです。

沖電線 放射性放熱板 0.13mm厚 120×125×0.13mm厚 1枚入り 難燃性、耐熱120℃ OKI-CS-15S

VR交換

ガリと、不安定動作していたVRも交換です。

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20年も大事に使われていたとのこと。電解コンデンサはすべて、交換しました。

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USのナカミチは、力強い音が特徴ですが、そこに、繊細が加わった仕上がりになったと思います。

電源も安定しているので、底力もアップしています。

これからも、末永く、音楽を奏でてくれると思います。

改版

スイッチング歪

プッシュプルの出力段のアンプには、多かれ少なかれスイッチングがあります。

それを防ぐため、低レベル時、プッシュ側とプル側のトランジスタを両方オンして対策していますが、BIASの調整と呼ばれる、レベルを調整することで、スイッチングノイズを小さく調整することができます。

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10kHzの波形を観測することで、調整することができました。

ケーブル交換

使っていただいていたのですが、当初確認出ていたガリガリというノイズが直っていないとのこと。もう一度見直し、クロスオーバ基板とメイン基板の接続ケーブルが接触不良があることがわかりました。

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洗浄と、接点復活剤を接触子に塗布し、ノイズが出ないことを確認しましたが、心もとないです。

交換が望ましいので、色々調査したところ、作成できる目処が立ち、交換を試みました。

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手動圧着工具で、長さをあわせのため時間がかかりましたが、

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仕上がりは、オリジナル以上の良さにできました。

バイパスケーブル

ケーブルを作ることができたので、バイパスケーブルもつくってみました。

トーンや、ゲインの調整ができませんが、KKバージョンでの仕様を楽しむことができます。

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Muses02装着

一列対タイプのOpAmpへ通常のディップタイプのOpAmpを装着する基板は、あまり流通していません。今回は、手作りして作ってみました。

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物理的な干渉を対策し、4つのOpAmpをmuses02に交換装着ができました。

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厚みのある耐熱テープで、振動による、接触不良や、脱落を防止も施しています。

これで、安心して、楽しんでいただけると思います。

カスタムナカミチアンプ

オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。

ヤフオク!

 ヤフオク! ナカミチメンテナンス 出品リスト

 

使用した測定器

使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ

廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。

FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。

波形貼り付けもPCにUSBで可能です。

奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。

 

OWON ハイコストパフォーマンスデジタルオシロスコープ 1Gs/s 100MHz帯域 薄型軽量 SDS1102

 

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