ECLIPSE 3242のカスタム・メンテナンスが再び流れ着きました。
片側チャネルが小さいとのことでしたが、切り替えスイッチの洗浄で無事復活。
ですが、いぜんから、このアンプで気になっていた、トランスの鳴きに泣かされました。
トランスの鳴きの原因は、思わぬ展開になりましたが、きっちりと対策し、安心して使えるようになりました。
さて、その原因と対策を含め、綴ってみたいと思います。
はじめに
3242は、55Wx4chと、比較的控えめなスペックですが、そのボディの大きさは一般的なアナログアンプの倍はあるでしょうか。
以前の資料にブロックの説明があります。
電源回路が独立2系統装着されています。
設計のこだわりが感じられます。
電源動作観測
このアンプは、経験があるため、早速、カスタム・メンテナンスを行いましたが、どうしても、トランスの”キーン”という鳴きが聞こえます。
スイッチング周波数は、100kHzなので、そんな音は発生しません。スイッチング動作が周期的に強弱すると、発生することが経験上わかっております。
スイッチング波形
トランスに印加する電圧と、スイッチング素子の制御信号を観測してみると
トランスへの印加電圧がデュティ50%で、アイドル期間が観測できません。
(制御は、少しオフ期間があるのですが、逆起電力により、印加電圧はDuty50%にみえます)
スイッチングの制御信号のOFFしている期間がとても短いことが分かりました。
どうやら、貫通電流が流れ、その挙動で、トランスの鳴きが発生しているようです。
調べてゆくと、どうも、電源立ち上がり時に、ディティが大きくなりすぎ、トランスが飽和した状態で、電圧が安定してしまっているようです。
調べてゆくと、この電源制御IC uPC494のデュティの最大値を決める値がMAXになっていることが分かりました。
今回スイッチングのデュティの最大値を可変ボリューム式にして、調整できるように変更してみました。
カスタム後の電源動作
スイッチング電源は、トランスの巻数の比率と、入力と出力の電圧の比率でデュティが決まります。
基本的には、電流の変化で、デュティは変化しないのが、ポイントです。
(実際には、電圧効果でわずかに変化します。)
ようやく、トランスへの印加電圧が、開放期間が見えるようになりました。
トランスの鳴きもなくなり、動作、効率も良くなりました。
カスタマイズ
今回のカスタマイズは、
- 電源メンテナンス
高負荷の電解コンデンサ等を一新し、耐久性をアップ - 高調波対策
ピアニシモを歌えるように、高調波を抑えます。 - カップリング交換
シルミックIIを用いてカップリングの音の劣化を抑えます。
にて実施しました。
一次側
一次側は、電解コンデンサの容量をx2、かつ、高分子電解、チップセラコンを装着
安定した電源波形になりました。
二次側
当初は、トランスに電流が常に流れている状態でしたが、
スイッチング期間が波形にあらわれています。しかも高調波やリップルレベルはきっちり制御しています。
二次側(電圧用)
このアンプは、電圧用の巻線があり、別の整流回路それにレギュレタでOpAmpの±15Vを生成しています。
出力波形
微小波形
オリジナルは、高調波がわずかですが、確認できますが
カスタマイズすることで
波形が細くなっていることが分かります。
周波数特性
最後に周波数特性を確認しておきます。
驚くほどフラットな特性であり、問題のないことが分かります。
まとめ
最終的に電源のコンデンサ等の交換、追加が、30箇所以上になりました。
また、各ドライブの電圧増幅用のOpAmpも動作が不安定だったので、低ノイズタイプに交換しています。
また、重要な初段と出力段のOpAmpには、パスコンを追加しています。
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。