a/d/s(Nakamichi)のDAC DA20eが流れ着きました。
電源が入らないとのこと。メーカのサポート業者さんに修理依頼されたのですが、直らず戻ってきてしまったとのことで、駆け込み寺の当方に流れ着きました。
トランジスタが、一つ破損していて、交換しても直らなかったとのこと。
トランジスタの型名も回路図もありませんが、さて直すことができますでしょうか。
はじめに
ナカミチのDACをこれまでも100DACやDAC-111等、色々メンテナンスしてきました。
でもDA20eは初めてですが、どうもスペックはほぼ同等の様です。
外観
外観は、少し工夫されているようで
アルミ箔や、ダンプ材が取り付けられています。
お伺いした所、20年前に埼玉のカスタムショップより手に入れられたとのことです。
内部
内部を見てみると、コンデンサ等の交換がされていそうです。
故障解析
まず壊れていた、トランジスタは、リモート信号がつながっている最初の箇所で、回路を追いかけてみると、抵抗内蔵、Pchタイプのトランジスタであることがわかりました。
この回路は、リモート回路なので、まずは、電源に通電するかをみてみました。
ところが、電源に電圧がかかりません。
基板の状態をよくみてみると
電源の入力部に改造がいくつか施されています。
どうやら、電源入力の+と-に小さなコイル(0.1A程度)が挿入されています。
導通確認してみると。
GND側のコイルが切れています。
この状態だと、+の電源が色んなところにながれ、リモートがOFFの最に逆に流れてしまって、回路を壊してしまったようです。
基板銅箔配線修復
まずは、もとに戻し、きちんと動作するか確認をしてみたいと思います。
切られた銅箔パターンは、銅板を切り取って加工して、しっかりと修復。
これでオリジナル状態nなりました。
リモートの制御用トランジスタもこれまでの経験をもとに代替品を装着し、通電すると
きちんと動作しました。
オリジナル微小信号状態
カスタマイズ
きちんと動作しましたので、いつもの電源メンテナンス及び高調波対策を施します。
- 電源長寿命化
105℃の長寿命かつ、低ESRの電解コンデンサに交換 - 高調波対策
最適な要領のチップコンデンサを随所に追加、高調波を抑制 - OpAmpパスコン
OpAmpの電源には、パスコンを追加 - GNDパラメータ変更
電源のGNDとRCAのGNDの接続係数を変更。
高調波のリターンラインを確保します。
電源(一次側)
一次側は、低ESRの電解コンデンサとチップセラコンで処理します。
ショップのチューンでは、スパイクやリップルが見られましたが、しっかり抑えられていることが、わかりました。
やはり、測定をもとに、適正な値、素子をもちいると的確にノイズを抑えることができますね。
電源(二次側)
二次側の、ショップの改造は、、コンデンサの交換のみの対応でしたので、
超低ESRの電解コンと、チップセラコンにより対応。
変動がほとんど見られない状態まで、抑制できました。
OpAmp電源
OpAmpの電源もパスコンでしっかりと処理します。
簡単な処置ですが、安心できる状態にすることができました。
出力状態
カスタマイズが完了したので、最終確認として出力確認を行います。
微小出力
微小出力は、少し高調波がみられましたが
改善しているのがわかりました。
周波数測定
周波数測定で、妥当性を確認します。
96kのサンプリング限界の40kHzまでしっかり伸びているのがわかります。
まとめ
電源が入らず、メーカの指定業者さんでも不具合内容が解らず、戻ってきてしまったDA20e。故障原因を突き止めるのが、大変かと思いましたが、なんとか突き止めることができました。
電源回路以外がこわれてしまっていると、交換部品の入手が難しいので、お手上げも覚悟していましたが、ショップさんの耐電流の小さなコイル装着が原因で壊れてしまったのがわかり、復活できたのは、なによりでした。
また、電源もこれまでの経験をもとにしっかりと改善。ナカミチ(a/d/s)の魂の声が聞こえるようになったと思います。
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使用した測定器
DAC(D10)
測定用にはD10というDACを用いています。
現在は、後継機のD10Sがあります。
正弦波もとてもきれいです。
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。