PA-30xシリーズ システムのシステム一式をメンテナンスする機会に恵まれました。
今回も前回に続いてPA-304です。
サポート業者によるメンテナンス済みのアンプとのことです。
蓋を開けてみると、手直しがされていました。その背景等を調べ、きっちりいつものいピアニシモ仕様に仕上げてみたいと思います。
はじめに
仕様
PA-304は、クラスABの45Wx4chを引き出すアナログ・パワーアンプ。
前回のブログに、仕様一覧表を記載していますので、ご参照ください。
ナカミチ PA-304 ピアニシモ アンプ ('23 8) ピアニシモ仕様 整備録
状態確認
早速、裏蓋をあけてみると。
ジャンパ線が見られます。
どうも過電流で基板の銅箔が溶けて無くなっているため、配線で補修したようです。
電源状態
電源を通電すると、動作するのですが、メイン電源の電圧が3Vほど低いです。
また、電流も少ないようです。
念のため、基板の銅箔にプロウレタン線でつなぎ直して
通電しところ、同じ様に過電流が流れ、スイッチング制御用のトランジスタが壊れてしまいました。
トランジスタを交換したところ、電源の電流が標準値になりました。
パターンが溶けてしまったのは、このトランジスタが壊れかかっていたため、きちんとOFFしなかったことが、原因でした。
盛り上がった半田(芋半田)
また、半田を盛り付けしたようで、もりあがった状態の半田(製造現場では、芋半田と呼んで、禁忌でした)が見られます。
隣通しを半田で繋げる処理をしていますが、配線パターンでつながっているか、半田ショートしているかがわかりません。
一度半田を吸い取り、もう一度半田します。
フィレット状態にすることで、部品のリードが浮き出て、きちんと部品が刺さっていることがわかり、接触不良の不具合を防ぐことができます。
とても重要な、基本的な半田の技術です。
カスタム・メンテナンス
今回のアンプのカスタム仕様は
基本メンテナンス
- 電源
耐久性アップ、安定性アップ、低ノイズ化を施します。 - 電源チョークコイル
電源のチョークコイルは、トロイダルコアを採用。
リップル低減と効率アップをもたらします。 - 高調波対策
チップコンデンサや高分子コンデンサを用いて、高調波ノイズを抑制 - OpAmp電源
使用する素子は、高熱容量のもに交換、温度上昇を防ぐとともに、
電圧の安定性を図ります。 - GND係数変更
入力のRCAのGNDと内部GNDの接続係数を見直します。
これにより、出力に見られる高調波をさらに低減できます。 - アンプ基板電源強化
アンプ基板の電源強化の為、電解コンデンサを追加。 - 初段ゲイン補正
近日のヘッドユニットの高出力に合わせ、初段のゲインを-6dB低減。
出力が2VクラスのHeadUnitにもマッチ。
基本を抑えたメンテナンスを中心に実施します
オプション
最新の素子を用いることで、さらにナカミチサウンドに磨きをかけます。
- OpAmp(muses8820)
スペックより音を聞かせる、Tr入力のオペアンプを採用 - 高分子フィルムカップリング
DCカップリングは、通例有極電解コンデンサを用い、高域をフィルムで補正していますが、高分子フィルム単一で、ワイドレンジかつ低歪を実現。
また、振動によるノイズ(圧電ノイズ)の心配もなくなります。 - 密閉VR
接触不良を起こしやすい、ゲインボリュームは密閉型へ。
メンテナンス検証
カスタム・メンテナンスは、機器ごとに必ず電源、出力波形を観測し、各部の動作と、仕様どおりの性能がでているか、きっちり確認します。
メーカのメンテナンスでは、工数や、技術者の関係で対応できない内容をきっちりと行います。
電源(一次側)
標準の一次側は、スパイク、変動が気になりますが
きっちり抑え込みました。
二次側(電力用)
少し電解コンデンサの容量が抜けていたのでしょうか、標準より変動が大きめでしたが、
トロイダルコアのコイル、超低ESRの電解コンデンサ、セラコンで抑え込みます。
二次側(電圧用)
スパイクがきになるところですが
しっかりと抑え込みます。
電源電圧
意外と見落としがちですが、電力用、電圧用、OpAmp用のそれぞれの電圧を確認します。
バランスが取れていない場合も結構見受けられます。
製品の確からしさは、ヒヤリングだけでは、難しく、エビデンスも残しにくいです。
当方では、各部の電圧値を測定、記録も実施しています。
出力確認
妥当性の確認として、出力観測と周波数特性を見てみます。
微小信号
標準のPA-304では、
正弦波の確認が厳しいですが
いつも通りのピアニシモ仕様の、きれいな波形が出てきました。
周波数特性
最後に周波数特性
いつものうっとりするような、周波数特性が観測できました。
まとめ
本2台目のPA-304なので、前回と仕様をしっかり揃えて、まとめ上げました。
全体のしあがりも、過度な実装はせず
耐久性の仕様になっています。
全体的にクリーニングを施し
とびきりのPA-304に仕上がりました。
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。
使用した機器
DAC(D10)
測定用にはD10というDACを用いています。
現在は、後継機のD10Sがあります。
正弦波もとてもきれいです。
オシロスコープ(SDS1102)
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。