Sound Streamの小型アンプが流れ着きました。
小型で16W x2ch のアンプとのことですが、実はなんと、A級アンプ。
オーディオファンならば出力小さくてもA級アンプは憧れのアンプです。
Rchの調子が悪いとのことですので、修繕とカスタム・メンテナンスしたのですが、出力に大きなノイズとDCが出力され、びっくり。
原因は、意外な所あり、無事修理完了できましたが、さて、その原因とは。
はじめに
WEB上でスペックを探してみました
- 定格出力:16wx2(4Ω)30wx2(2Ω)
- 全高調波歪率:0.1%以下
- サイズ:178Wx59Hx156Dmm
- Class A
スペックは、出力も大きくないですし、歪も0.1%ですが、A級アンプ。
アイドリング電流も3A程度(50W常に消費します)
小さなボディーがあっという間に、情熱的な温度になます。
外観
ヒートシンクにひっそりと端子が覗く、シンプルな上品な作りです。
小さくて上品なアンプですね。
内部構造
内部構造は、シンプルです。
基板の大部分が電源回路に割り当てられています。
出力状態
簡単に出力を確認してみました。
(-80dB 1kHz)
少しスパイクノイズが見えます。
電源のノイズか電源の状態を確認してみたいと思います。
電源状態
このアンプの電源は、至ってシンプルですね。プッシュプルの電源になっています。
入力ノイズ
消費電力が大きいので、リップルも確認できます。
少し高調波が気になります。
二次側
二次側の電源電圧は、18Vと低いのですが、定常電流が大きく少し厳しいと思われrます。
100mV以下ですので、良好です。ですが、少し高調波が気になります。
カスタマイズ(Phase 1)
R側の音が小さいのは、スイッチの接触不良とのことでしたので、エレクトロニッククリーナで清掃してみたところ、不具合は、解消され、アンプ回路は、特に問題ないことがわかりました。
安心して、ご指定の、SWを取り外し、ステレオ固定にしてみます。
これが、思わぬ落とし穴だったのですが...
電源メンテナンス
小型アンプですので、入力側と二次側のコンデンサの交換と、高調波対策を施して、出力ノイズの低減を試みたいと思います。
一次側
コンデンサを低ESRのものと、セラコンを追加で対策しました。
二次側
これも、低ESRの電解とパスコンの組み合わせで
波形は、良好になったのですが...
出力確認
なんと、波形を記録する気力も無いほどに、悪化してしまいました。
出力にDC3Vが印加されています。
壊してしまった...
いろいろ電圧を確認しても問題ありません。
念の為スイッチを何度も確認しても、一般のスライドスイッチで、きちんとステレオになっています。
スイッチの固定のパターンをみたところ、スイッチのボディの両端がGNDにつながっている、少し不思議な配線です。
実は、SWのボディを介してGNDが接続されていたのでした。
両端を太めのウレタン線で接続して、無事に。
でも、出力のノイズは、全く変わっていませんでした。。。
(測定データを残す気力もありませんでした...)
カスタマイズ(Phase2)
気を取り直して、電源パターンを確認してみました。
アンプへの電源供給配線は、途中で分岐し、電解コンデンサは、別配線で接続されています。
電解コンデンサのところにパスコンを追加してしまうと、途中で分岐しているアンプへノイズが伝搬してしまいます。
これでは、意味がありません。
二次側高調波パスラインの短縮
電源の基本は、スイッチングノイズは、近傍で、戻してあげる必要があります。
オリジナルに戻せるように、パターンを検討してみました。
赤(正極)、白(負極)が短い回路にできそうです。オレンジの部分に銅箔を切って追加してみました。
銅箔パターン追加
0.3mm厚の銅箔は、カッターで切り込みを入れて、数回屈曲すると、切り取ることができます。
耐熱テープ(カプトンテープ)で固定して、はんだ付けします。
最初にパスコンを追加した状態です。
その後、高分子コンデンサを追加して
出来上がりました。
二次側ノイズ(Phase2)
ノイズレベルも少し小さくなりましたが、さて、出力のノイズは、改善できたでしょうか。
微小信号確認
微小信号を確認してみました。
きっちり改善できました。
周波数特性
アンプが仕上がりましたので、最後に周波数特性を観測してみました。
すごく、きれいな特性です。
無理に高周波数を伸ばさず、意図的にまとめているように感じられます。
聞いていると、本当に優しい音、染みる音が聞こえてきます。
放熱対策
オリジナルは、絶縁フィルム+シリコングリスでヒートシンクに接続しています。
固定がネジで弾力が無いので、やはり、弾力性のあるシリコンラバーにして安定化させました。
小さなトランジスタ(右端2個)とサーモスタット(中央の細長い部品)部品は、電極が出ていないので、放熱シートを用いています。
ヒートシンク側についているシリコングリスもきれいに拭き取り、部品側のラバーとシートのみでスッキリさせました。
スッキリさせるのみならず、無理なく放熱板に安定接触でき、末永く歌ってくれることでしょう。
まとめ
今回は、いつもの高調波対策を施したにもかかわらず、出力のノイズ低減効果が得られないどころか、DCまで出力されてしまう事態になり、かなり焦りました。
でも、一つずつ、原因を探りなんとか解決できました。
オリジナルで観測された高調波も小さくなりましたので、A級アンプの分解能がより際立って聞こえてくるのではないでしょうか。
やはりA級アンプは、測定では、違いが見つけにくいのですが、とても優しい音がします。なかなか出回らないですが、見つけたらぜひ手に入れてみたいアンプです。
ツイータや、小口径のフルレンジをそっとならしてみたいアンプです。
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(三万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。