Valcanのパワーアンプが流れ着きました。
USAの比較的小ぶりのアンプです。かなりレアなアンプで、音にこだわりがある一台です。
さて、その実力は、
はじめに
はじめにVacanアンプを紹介してみます。
Overview
WEBの詳細のスペックを探すことができませんでしたが
- 40W(想定) x2ch(ブリッジ対応)
のシンプルなパワーアンプです
大きなヒートシンクのボディにゲインのみのシンプルなパネル
内部のレイアウトはスペースに余裕をあります。
右側に電源
左中央がプリアンプ、上下にアンプの出力段の構成です。
とてもシンプルでスッキリしています。
基本的には、入力にOpAmpが一段(TL072)が入っていますが、その後は、ディスクリート構成で丁寧な作りです。
ブリッジ出力対応の為、右側が反転出力になっています。
状態確認
基板の状態をよくみていみると、抵抗が少し焼けています。
回路を調べてみると、出力段のノイズ吸収用のフィルタ回路です。
高調波が多めに出ていたのでしょうか。少し気になります。
出力状態(微小信号)
早速出力状態を確認してみます。
-60dBの状態で、少し高調波が見られます。(いつものナカミチでは、-80dBでも同等以下です)
FFTで調べると20kHz以上の帯域のようですので、大きな影響はないと思います。
この強めのスパイクでフィルタの抵抗が焼けてしまった模様です。
周波数特性
周波数特性も確認してみました。
ネットワーク機能等がないためでしょうか。
とてもきれいな特性です。素晴らしいですね。
電源状態
このアンプの電源は、25Vです。
電源から計算すると、実行出力40W以上の出力容量と考えられます。
一次側
入力のフィルタはないのですが
0.4V程度のリップルですので、とても良好です。
二次側
多少リップルが見られますが、200mV以下ですので優秀です。
ただ、このスパイクが、出力に漏れているようですので、原因を調べる必要がありそうです。
カスタマイズ
電源の高負荷のコンデンサ交換を始め、高調波対策を行ってみたいと思います。
一次側
一次側は、低ESRの電解コンデンサと、チップセラコン対策を施しました。
300mVが60mV程度に抑え込めました。
二次側
二次側は、少し、配線の見直しからはじめてみました。
赤が+25V、青が-25Vで、○が電力の起点になります。
よく見ると+24Vと-24Vの電源の配線ルートが異なっています。
+24Vの左側は、すぐに出力のトランジスタに接続されています。一見良さそうに見えますが、高調波がダイレクトに伝搬してしまい、コンデンサの平滑の恩恵があまり受けられません。また、左右で、配線の経路が異なるのも改善したほうが良さそうです。
一部配線を簡単な変更で改善できそうです。
電解コンデンサを経由して出力トランジスタへ供給するようにしました。
これで、左右対称に近いの配線になりました。
二次側(コイル追加)
配線の改善により、出力の高調波は、多少削減できたのですが、まだ改善の余地がありそうです。
一般的に行われているコイルを入れます。
この位置でコイルが装着できそうです。
波形を測定してみると
10mV以下にすることができました。
出力確認
微小出力(1kHz-60dB)
早速ピアニシモ効果が、出力の高調波ノイズ抑制に効果があるか、確認してみたいと思います。
周波数特性
最後に周波数特性の確認です。
高分子カップリングの効果で、わずかに低域が上昇しています。
50kHzの高域は、わずかに落ちていますが、どうやら高調波ノイズがなくなったためと思われます。
まとめ
かなり貴重なアンプValcanをカスタマイズしてみました。
- 修理
出力フィルタ素子交換(抵抗) - メンテナンス
低ESRの電源用電解コンデンサ
小さな電解コンデンサ交換 - 高調波対策
配線経路の改善
フィルタ追加による対策
チップセラコン対策 - OpAmpパスコン追加
通常のピアニシモカスタマイズは、これまでの経験を生かして合理的に対処できたと思います。
その他にオプションとして
を採用しています。
カスタム後の状態
当方のカスタムは、むりのない実装を基本としています。
もう一度このアンプを改版した時に対応可能な範囲と思います。
高調波がスッキリした関係でしょうか。音はゆったりと聴ける状態になりました。
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。