USナカミチのPA2002をカスタム・メンテナンスする機会に恵まれました。
時折ノイズが出てしまう症状があるとのことです。
しっかりメンテナンスしてみたいと思います。
はじめに
このPA2002は、100W x2chにクロスオーバを搭載した、使いやすいアンプです。
重力も7kgと準ヘビー級です。
スペックは、同じシリーズより少し改善している項目がありますね。
外観
ほとんど30cmの正方形でしょうか
片側のパネルの下にクロスオーバのスイッチ群があります。
モード切り替えにダイレクト、ゲインのみそしてノーマルが選択できます。
クロスオーバは、ラインアウトとHighPassとLowPassが排他になっており、考えられています。
サイドパネル
サイドパネルの一方は、LineのIn/Out系
反対側は、電源とスピーカアウトプットです。
底面は、フラット。
この底板は、少し曲げてあり、ポコポコいう鳴きを抑えてあります。
基板
底板をスライドさせると基板がみえます。
半分が電源ですね。
修繕(クロスオーバ基板接続ケーブル)
最初に状態確認の為、基板の取り外しを行ったところ。
クロスオーバ基板との接続ケーブルの取り付けが、両方直ハンダされています。
外す作業を行った際、半田の浸透が少ないためでしょうか。
一本取れてしまいました。
一旦すべてケーブルを取り外し、末端処理(予備ハンダ)を再び行いました。
また、相手側を標準仕様のコネクタとしました。
それにより、オーナのボリュームレス(プリアンプバイパス)要望に、ワンタッチで切り替えられます。
このバイパスコネクタは、InとOutを折り返します。
(最終のカスタム状態の写真)
状態確認
まず、オリジナル状態を確認してみます。基本波形と、電源のノイズ状態を確認します。
出力信号
USのナカミチは、少し高調波がきになることがありますが。
このPA2002は、まずまずでしょうか。
電源(一次側)
電源の状態を確認してみます。
このPA2002は、スイッチング電源が少しユニークな回路になっています。
一次、二次のGNDが共通で、一次側の回生エネルギーも使用している思想が見えてきます。
一次側の変動は、
小さなコンデンサが12個装着されている効果でしょうか。100mV程度で良好です。
ただ、リップルの波形が、周期が安定していません。
静かなところでアンプを動作させると10kHz程度でしょうか。”キーン”というトランスの鳴きが聞こえます。
これは、以前にも解析したのですが、スイッチングの制御信号をパルストランスを介しているため、スイッチング信号が引き伸ばされてしまい、不安定であることが分かっています。
しっかりこれも直して、安心して末永く使えるアンプにメンテナンスします。
電源(二次側)
USのナカミチの二次側は少しスパイクが目立ちます。
フィルタが装着されていない為ですが、250mV程度ですので、良好です。
今回は、フィルタを追加してその効果も見てみたいと思います。
カスタマイズ
- 電源安定化
スイッチング周期を安定化するための変更を加えます。 - 電源メンテナンス
一次/二次側の電解コンデンサは低ESR品に交換します
また、一次側には高分子もいくつか装着します。 - 電源配線改善
電流が、供給元から必ずコンデンサを経由してアンプ回路へ流れるように
パターンを一部変更。 - 高調波対策
チップセラコンにて高調波を抑制します。
その他、二次側にコイルを追加して、ノイズを抑制を行います - OpAmp電源
電源にはOSコンを採用。また、OpAmp直下にもパスコンをもれなく装着 - GNDポイント見直し
一次側と二次側が接続しているので、スイッチングによる電流ノイズの影響が小さくなるように配線を見直します。 - プリアンプダイレクト
プリアンプをダイレクトにするための折り返しコネクタを装着。
もし、もとに戻したい場合は、パネルを外して、プリアンプ基板のケーブルに差し替えれば、いつでももとに戻せます。
カスタム結果
一次側
最初にスイッチングを安定さるところから。
青い波形がスイッチングの制御信号(ゲート)なのですが、元の信号がほんのちょっとなのに、ゲート信号がすごく長く緩やかです。
これを少し傾斜が急にすることで、制御元の波形幅が広がり、制御系が安定します。
その後、低ESRのコンデンサを8個と高分子4個の組み合わせ。
最後に、チップセラコンで仕上げました。
二次側
二次側の電解コンデンサも交換し
その後チョークコイルを追加
チップセラコンで仕上げました。
リップルは、250mVから100mV前後に改善です。
基板配線
この基板は、きちんと考えられています。
電源の供給元から一旦電解コンデンサを通過して、アンプへ供給しています。
さらに当方では、セラコンを装着しつつ、配線も改善しています。
出力状態
さて、高調波が少しきになる出力でしたが
かなり落ち着きました。
周波数特性
最後に周波数特性を測定し、メンテナンスの確認を行います。
プリアンプをバイパスしているからでしょうか。100kHzまで、伸び切っています。
高域までフラットなので、高調波の漏れが少し残ってしまったと思われます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。PA2002シリーズの電源は、制御信号にパルストランスを用いているため、周期が安定せず、トランスの”鳴き”が見られます。
これは、スピーカにノイズとなって現れることもありますので、ぜひこのPA2002シリーズをお使いの方は、当方にメンテナンスされることをおすすめします。
ヒヤリング
電源の効率がよいからでしょうか。とても力強い音が出てきます。
また、高調波対策を施した効果で、ゆっくり落ち着いて安心した音が流れてきます。
特にクロスオーバのバイパスを行うと、明らかに解像度が上がります。
100kHzまで伸び切っている影響でしょうか。
このコネクタによる切り替えは、おすすめのオプションになります。
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(三万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。