数多くメンテナンスさせていただいているおなじみ PA-304がまたドッグ入しました。
調子が悪いとのことですが、状態を確認して、メンテナンスしてみたいと思います。
もちろん、高調波カスタム仕様で仕上げます。
はじめに
PA-304は、シートの下に滑り込ませられるサイズでありながら45W x4chの高出力と、0.005%の低歪を謳っている人気のピュアアナログアンプです。
そのためでしょうか。素子への負担が大きい為、コンデンサ等は、30年経過するとどうしても、交換が必要になってきます。
液漏れの問題を抱えているコンデンサの背景もあり、残念な状態の基板も多くありません。(ぜひ、PA-304のオーナーの方、大型コンデンサだけでも交換をお勧めします)
物理的状態
外観
外観は、大きなダメージもなく、端子台等の欠け等なく、問題ありません。
状態を確認している時に、少し酸性の匂いがしました。気になります。
内部
内部をあけてみると、やはり液漏れが、確認できました。
絶縁紙にスパーク痕があります。
電解液で溶けた銅箔が、電化に引きつられて、根を伸ばすように、再結晶し短絡することがあります。(マイグレーションと言います)
電源基板状態
電解液は、水溶性ですので、薬剤を使わず、最初に流水洗浄します。
基板の状態がよくわかります。
多少、腐食が見られますが、大きな欠損は無く、十分修復可能な状態です。
基板研磨
酸化が進まないように、腐食の部分を研磨します。
パターンが薄くならないように、注意しながら、最低限の研磨で処理しました
電源基板部品状態
状態を確認する為に部品を外してゆきます。
結局、写真にあるトランスと、ヒートシンクも外して、清掃を行いました。
右下のヒートシンクを取り外すと、
電解液が流れ込んでいたので、取り除きます。
二次側補修
二次側の電解コンデンサの腐食により、近傍のジャンパ(15本)、抵抗等(x3)を交換して
電源の修繕完了です。
OpAmp電源修繕
OpAmpの電源は、少し電流が大きく、温度上昇により、基板等にダメージを与える傾向があります。
基板が焼けて黒くなっています。パターンも少し焼けていそうです。
抵抗とトランジスタの容量をアップして、放熱対策を施します。
基板も洗浄して、まずは、修理完了です。
このOpAmpの電源電圧は15V仕様ですが、設計仕様は18Vです。
高調波対策の時に、少し電源電圧を上げて、電力ロスを小さくして、マージンを増やす変更を施す予定です。
ハトメ補修
OpAmpの電源の基板が焼けていて、注意深く確認したところ、やはりパターンが剥離
(基材から銅箔が剥がれてしまう)していることがわかりました。
ハトメ処理で修繕をおこないました。
赤い部分の銅箔が表の部品を触ると動いてしまいます。
1.2mmのハトメを用いて修繕してみました。
- 1mmのドリルで穴をきれいにする
(1.2mmですが、1mmのドリルで数回揉むみ、キツめ挿入できるように) - ハトメを挿入
- 周りだけ、半田を流す
- 部品を取り付け全体をはんだ付け
(この後、はんだ付けを行えばしっかり固定できます。)
ドリルで穴を少し広げる時に、弱っている銅箔にダメージがないように抑えながら作業します。
これで、安心して使えるようになりました。
電源状態
幸いなことに、コンデンサ等の交換で、きちんと動作するようになりました。
早速、電源の状態を確認してみたいと思います。
いつものように、各ポイントのリップルを測定します。
入力側
入力側を確認してみます。
入力は良いのですが、一次側のリップルがいつもは2V程度ですが、ちょっと大きそうです。高調波対策しても、リップルのレベルが数Vあるようであれば、原因を後で調べる必要があります。
二次側(電力用)
すでに、基板洗浄時に合わせて、チョークコイルをコアタイプのものに交換しています。これは、磁気漏れが少なく、高調波の伝搬もすくなく良好です。
20mV以下ですので、とても良い状態になりました。
二次側(電圧用)
通例、スパイクノイズが大きいのですが、
多少ありますが、PA-304の標準レベルです。
後段に低電圧回路があるので、ノイズの伝搬は、ある程度抑制されます。
OpAmp電源
近傍にコンデンサが無いので、少しノイズが確認できるのが通例ですが
多少ありますが、パスコンで抑え込めるレベルです。
アンプ基板側電力電源状態
アンプ側の基板の電源が、当方は、どうしても気になります。
各チャネルに電源基板より、ケーブルで、電力用電源が供給されます。
この電源の状態を確認すると、
少しリップルが確認できますが、50mV程度ですので、立派な状態です。
更に良くするために、いつもの様に対策してみたいと思います。
微小信号
出力に電源ノイズの漏れを確認するために微小信号(-80dB)で確認します。
PA-304の傾向ですが、Bchが少しノイズが目立ちます。これは、入力GNDが直接つながっていない影響が高周波にあらわれていると考えています。
高調波対策等にて、改善してみたいと思います。
つづく
今回も、基板の損傷が小さかったため、基本メンテナンスで、元の機能を取り戻しています。基本状態を確認できたので、これから、高調波カスタム・メンテナンスに進みます。お楽しみに。
ナカミチ PA-304 カスタム・メンテナンス (2021 03) ② カスタム編 - pp audio blog
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。