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オーディオと電源回路 ピアニシモを聞くために

スピーカネットワーク の不思議

スピーカネットワークをご自分で設計して楽しまれている方が多いと思います。
WEBにある計算ツールで、コイルとコンデンサの値を組み合わせ、実際の視聴により、少し容量を変えて楽しまれていると思います。
でも、片方だけ、容量を大きくすると、ある帯域だけ、増幅(ピーク)が生じることがあります。私も、デジタルアンプの出力段にもフィルタが装着されていて、超高域にピークが観測さ、実感しました。はじめは、アンプの特性かと思っていたのですが、じつは、最終段の12dB/Octのフィルタのコンデンサの容量が大きいのが、原因でした。
(もちろん、デジタル固有の高調波ノイズ対策の為の副産物だったのですが。)

その不思議を綴ってみたいと思います。

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はじめに

デジタルアンプのf特

 以前取り扱いした、JBLのデジタルアンプのf特です。

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なにやら20kHzにピークがあり、はじめは、デジタルの特性かと考えていました。

ですが、ネットワークの計算を行ったところ。

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ピタリと一致しました。

LCフィルタで増幅?

コイルとコンデンサを組み合わせてスピーカのネットワークに何気なく使っていましたが、その値の計算方法は、いろいろな便利ツールを使うだけで、その計算方法を理解していませんでした。

なぜ、フィルタなのに、出力レベルが上昇してしまうのでしょうか?

外部電源もないのに、なぜ電圧が上昇するのでしょうか、それも8dB、約倍にも。

 

おさらい

ここで、ネットワークの計算をおさらいしてみました。当方の備忘録も兼ねていますので、ご存じの方は、読み飛ばしてください。

6db/Oct フィルタ

LowPassを題材に、簡単な回路図にすると

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計算式にすると

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となります。

ωは、周波数x2π ですので、周波数が高くなると抵抗値が大きくなる、特性がわかります。

jは虚数で、虚数空間と実数空間を分けられるよう工夫されています。

参考例として10kで-3dBを計算してみました。

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ゆっくり、減衰しているのがわかります。

100kHzでやっと、1/10になります。

12db/Oct フィルタ

クロス後なるべく減衰させる為、ここにコンデンサを追加するのが12dBのネットワークです。

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ネットワークの計算ツールはありますが、計算式は、なかなか見かけません。

モジュールが直並列になっているので、少し厄介です。

(理解するまで、結構、考えてしまいました。)

 

コンデンサとスピーカの並列計算

最初にスピーカとコンデンサの並列回路で計算します。

抵抗の並列計算と同じアドミタンス(電流の流れやすさ)の加算になります。

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少し、不思議なことをしていますが、、合成インピーダンスの大きさを、ベクトル式に戻して、わかりやすくしてみました。

EXCEL等の表計算のときもわかりやすいです。

この時、虚数部と実数部を分けると、あとあと、便利です。

コイルを加算すれば12dBに

その後、コイルのインピーダンスを加算すれば、12dBのベクトル式が求まります。

 

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コイルは、虚数部のみですので、かんたんにベクトル式に加算できます。

同じカットオフ周波数なのですが、コイルの容量が違います。

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12dBの方がコイルが大きいのに、6dBと同等の周波数より減衰が始まります。

 

デジタルアンプ例

スピーカネットワークがデジタルアンプに入っている?と思われる方もいらっしゃるかもしれいませんが、必ずLow Passフィルタがデジタルアンプには入っています。

デジタルの高周波数サンプリングが、スピーカに印加されるのを防ぐためです。

 

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このJBLでも 約250mVと大きな電圧が印加されているようです。

デジタルアンプのフィルタ数

ここで、冒頭のデジタルアンプフィルタの特性を見てみましょう。

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約30kHzで約倍の8dBまで増幅していることがわかります。

これは、黄色のインピーダンスをみると分かるのですが、途中、インピーダンスが低くなっているのがわかります。

すなわち、8Ωのスピーカなのに、抵抗値が1オーム程度まで下がり、極端に、電流が大きくなっていることがわかります。

この時、コンデンサの両端の電圧が上昇し、すなわちスピーカに大きな電圧が印加され、増幅現象が生じます。

一種のDC/DCコンバータの動きに似ています。

係数変化によるf特の影響

今度は、コイルを一定にして、コンデンサの容量を変えてみます。

コンデンサの容量が適正だと-12dB/Octになりますが、コンデンサの容量が大きくなると、増幅します。

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まとめ

当方は、ネットワークでもとの電圧以上の電圧がかかることは、予期していませんでした。よく考えてみると、納得なのですが、いままで、安易にコンデンサやコイルの組み合わせを行っていましたが、少し気をつける必要があります。

便利なネットワークの計算ツールは、コンデンサとコイルの値をそこそこ適正値に合わせてくれますが、スピーカのインピーダンスや、片方の値だけで調整するのは、注意が必要で、数割程度が無難では、ないでしょうか。

やっと、ネットワークの計算ができたので、デジタルアンプのフィルタを-24dB等で対策してみたいと思います。お楽しみに。

 


 

 

下記は、エクセルの計算シート例です。

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作ったExcelシートは、ご要望の方、ございましたなら、ご連絡お願いします。

Mailにて配信させていただきます。

 

 

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