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オーディオと電源回路 ピアニシモを聞くために

JBL Stage A4006 デジタルノイズ対策

以前、JBLのStage A4006の素性をお届けいたしました。

その際、可聴範囲外ですが、デジタルノイズ320kHzが漏れていることがわかり、ハイカットフィルタの変更や追加で簡単に直るだろうだろうと、調整していましたが、多少のコイルの追加や、コンデンサの容量アップでは、目標まで低減することができず、苦難していました。やはり、理論的に適正値を求めてから、対策する必要があると考え、フィルタの計算をし始めたのですが...

さて、どんな結果になったでしょうか。

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はじめに

おさらいになりますが、今回のA6004の測定環境をご紹介します。

測定環境

 

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フィルタ回路

デジタルアンプは、PWM等で、デジタルをアナログに変換します。その際のPWMの基本周波数が、超高域 数百K Hzで行うのが、一般です。

その変調信号がスピーカに流れないため、ハイカットフィルタが装着されているのが一般的です。

このアンプのハイカットは二次の12dB/oct.の回路+コモンモードフィルタになっていました。

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A4006 周波数特性

4dBほど、30kH付近で上昇しているのがわかっています。

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イカット 計算値

計算でどの様なフィルタになっているか、確認してみました。

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同じ周波数で8dBものピークがあるのがわかります。フィルタのコンデンサコイルの値が、一般的な関係から、すこし逸脱しているのがわかります。

高調波の漏れ

実際の高調波の漏れは、約250mVあり、1/10以上 (20dB改善)にしたいところです。

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コンデンサを小さくすると

20kH以上の-12dB/oct.の定数を探ってみます。コイルの数値はそのままで、コンデンサの容量を小さくしてみます。

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ピークが小さくなりました。

インピーダンスの極端な低下も押さえられました。

コンデンサの容量を小さくするとカットオフの周波数が上がります。その分サンプリング周波数(320kHz)の減衰が弱くなってしまいます。

コイルを大きくする

今度は、コイルを大きくしています。

 

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ピークの周波数が少し低くなり、押さえられます。この容量は、簡単に同サイズで装着できる値を参照しています。

コイル大、コンデンサ

両方の変化させるとどうでしょう。

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320kHzの減衰は多少上昇しますが、ピークもそこそこ押さえられ、フラットな特性が得られそうです。

実測

角型のインダクタ(22uH)が入手できたので、実測してみました。

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ピークが残るはずなのですが、再生の限界でしょうか、ほぼフラットな特性になっています。

あとは、デジタルノイズ320kHzを対策すれば良いです。

フィルタ 追加

フィルタにコンデンサ、コイルを梯子型に追加すると、フィルタの次元を増やすことになるそうです。もともとの回路は、2次フィルタになります。

このフィルタで320kHzの減衰を大きく、かつピークがないように応すると、コイルを大きくする必要がありますが、サイズの関係及び、ロスが大きくなり発熱が問題になり、現実的ではありません。

3次フィルタ

出力のコモンモードビーズインダクタの代わりにコイルをつけられそうですので、まずは計算してみます。

47uHとその約半分の22uHにて計算してみました。

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47uHは、大きすぎピークが生じ、かつ、可聴範囲の減衰も気にまります。

22uHでは、ピークが押さえられ、良好そうです。ですが、まだ320kHzの減衰がまだ足りません。20dB以上改善を目標としますので、一つ追加しただけでは、無理です。

 

4次フィルタ化

最終段にもう一つコンデンサを追加して、4次のフィルタを検討してみます。

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色々試してみて、+.47uFが実用的になりそうです。

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実測で可聴範囲での減衰が多少見られたので、改善も期待し、かつデジタルノイズの減少を目指します。

3次・4次 測定

さて実測してみましょう。

入手したコイルが47uHだったので、まずそれで3次を測定、その後23uHに調整し、コンデンサを追加して測定しました。

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47uHのコイル追加で三次にすると、可聴範囲から減衰が始まり、高域で少しピークが生じます。一方4次化で調整された定数を用いると、フラットでかつ、超高域の減衰も確認できました。

波形観測

肝心の波形は、最終的にどのように変化したでしょうか。

1kHz

2V出力(0.5W相当)の状態で、もともとは、高調波で波形が太くなっていましたが、

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ほとんど気にならないくらいきれいになりました。

20kHz波形

少し厳しい測定ですが、20kHzで約200mVを測定してみました

 

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大きく改善されているのがわかります。

よく見ると高調波が残っていますが、影響の有無は、ヒヤリングを行って確かめてゆきたいと思います。

FFT解析

FFTによるノイズや歪の程度をみてみました。

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320kHzのヒゲが20dB以上改善しており、かつ、可聴範囲のヒゲも減少しているのがわかります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。デジタルアンプは、その仕様より、効率の良さが特徴です。しかしながら、デジタル変調ノイズ(サンプリングノイズ)等対策が十分されていないと、可聴範囲外であるにも関わらず、耳ざわりな音と感じることが多いです。

基板状態

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電源の高調波対策も施し、部品実装も、無理矢理感がなく、綺麗にまとまったと思います。

Trの放熱がクリップ式だったのですが、カスタムを施す上で、アルミ引き物を使い放熱効果もアップ、確実なネジ固定方式に改善しています。

フィルタ計算の注意点

フィルタの計算は、回路構成は、あまり変わりませんが、その定数の決め方でいろいろな方式があります。注意しなくてはならないのは、一般的なフィルタの計算は、回線のインピーダンスが定義されて初めて成り立ちます。

オーディオのアンプの場合、インピーダンスは、低ければ低いほどよいとされており、この最低限の条件から逸脱しています。二次以上のフィルタの計算定数を用いると、フラットであるはずの、バターワースを用いても、ピークが生じるのがわかってきました。

これをフラットにするには、シリーズにスピーカと同じ8オームを挿入しなければなりません。これは、現実的ではありません。
(ツイータ等で、アッテネータが必要な場合は、そのまま8オーム入れて良いことになります。)

このフィルタの計算、オーディオのスピーカネットワークに絞り、綴ってみたいと思います。

 

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