キッカーのアンプでも小型の使いやすい 652xiが流れ着きました。
あまり情報がないのですが、Impulseシリーズ、クロスオーバや、LowとHighのブーストがついています。
通電したところ、電源は入るのですが、少し雑音が出ます。
早速メンテナンスして、その実力を確かめてみたいと思います。
はじめに
WEBで調べてわかった範囲のスペックをまとめてみました。
歪や帯域は、654xiの仕様を引用しています。
85Wx2でPA-302と同等の出力容量ですが、コンパクトに作られています。
ネットワーク機能等も有しており、サブウーファのアンプとしても使いやすそうです。
内部状態
内部を開けてみました。
電源は、トロイダルコアで、プッスプルのづいっチングですね。
ネットワークには、フィルムコンデンサが使われています。
OpAmpは、入力用x1、イコライザ用x2、そして、クロスオーバには、4chが2個装備されています。
電源状態
ノイズが確認できますので、はじめに、電源の状態を確認してみました。
一次側の電源には、セオリー通りに複数のコンデンサが装着されています。
期待できそうですね。
一次側
スイッチング電源ですので、多少のスパイクは、覚悟していましたが
一次側で200mV、とても良好です。
二次側(直下)
二次側はさてどうでしょうか。
なにも対策を必要ないほど、良好です。
二次側(フィルタ後)
念の為フィルタ後のアンプへ実際接続されている電源を確認。
ほとんど、測定誤差範囲です。とても良好です。
出力状態
出力状態を確認したところ、スパイクノイズが周期的に出ています。
周期も100Hzと遅いので、スイッチングノイズではなさそうです。
色々し調べてみると...
- 出力にDCがRchのみ 0.3V程度漏れている。
- パワーアンプの入力段では、DC漏れは確認できず。
- パワートランジスタを左右交換しても、状態はそのまま
- 電圧増幅初段用トランジスタ(ペア)を交換すると、少し改善
- さらに、電圧増幅二段目用トランジスタ(ペア)を交換で、完治
という工程で、問題箇所を特定できました。
発熱対策
動作確認をしていると、どうしても交換した箇所のトランジスタが触っていられないくらい熱くなります。代替品として採用したトランジスタだけでなく、オリジナルもかなり熱を持っています。
おそらく、長い時間使っていて、この熱によりトランジスタに負担がかかっていたと思います。これは、放熱対策を行ったほうが良いです。
いつも当方では、一回り大きなトランジスタに交換して、温度を下げる方法を用います。トランジスタの特性も小型トランジスタのエリアでは、ほぼ同じものがあったので、交換し、対応しました。
もちろん多少熱を持ちますが、かなり温度が下げることが出来ました。
出力確認
以前は大きなスパイクがありましたが
縦軸の単位を倍にして、同等になり、スパイクも、なくなりました。
微小出力確認
この状態でいつもの微小出力を確認してみます。
きっちりとサイン波が観測できます。とても優秀な状態です。
周波数特性
周波数特性を確認します。
どうも、左右で特性やレベルに差があります。
ボリュームを絞りきった状態でも左右のレベルに数dBほど差が生じ、どうも周波数特性の傾向が左右で若干異なります。
プリ部解析と改善
入力段のプリアンプのカップリングや、ボリュームの交換等をおこなっても、レベル差が収まりません。
入力の初段の回路、プリ部を解析してみました。
ブリッジ接続対応の為、OpAmpの回路が左右で、異なっているのがわかってきました。
ゲインの違い
Rchが反転増幅、Lchが非反転増幅回路になっています。
計算上でも0.2dB程度違いがあります。これは、気になります。
- 左右のフィードバック定数が倍半分異なる
opAmpの増幅率を決める2つの抵抗のRfが倍半分違います。
これは、オペアンプの応答も変わってきてしまうので、気になります。 - 高域補正用の定数が異なる
Rfに並列に入っている小さなコンデンサも実は22p/15pと異なっていました。
入力インピーダンスの違い
回路が違うので、入力インピーダンスも気になるところです。
非反転の入力のR2は、回路としては、不要で、なくすことでハイインピーダンス入力回路にすることも出来ます。ですが反転入力は、どうしても、イマジナリーショートがあるのでR1がGNDにされると等価になるので、入力インピーダンス抵抗になります。
本来は、 LchのR2を15.2kにすべきなのですが、あえて22kにしてそうです。これは、意図的であることが後でわかってきました。
OpAmpに付随するGNDへ落とす抵抗値が15.2kと22kと違ってきていますので、入力のゲインボリュームをあわせての減衰率が少し違ってきます。
プリ部のゲインとボリュームの位置との関係を計算してみました。
ボリュームを絞っているときにゲインをあわせているために、入力のインピーダンス抵抗値で少し補正したのではないかと思われます。
プリ部対策
特性を左右でなるべく合わせたいので、条件を決めて、検討してみることに。
- 入力インピーダンスは、同じ
- OpAmpのフィードバック抵抗(Rf)を同じに
- OpAmpのゲインは-6dB程度下げて、ハイレベル対応に
- あまり定数を大きく変えない
Rfの値を47k、入力インピーダンスを15kとしてみたら、意外とかんたんに求めることができました。
これで高域補正のコンデンサ容量も同じにすることができ、プリ部の特性の左右の差を解消出来たと思います。
改善後f得
高域補正のコンデンサを少しだけ大きくして、高域を抑えてみました。
もし高域が足りなければ、ハイのEqを少し持ち上げればよいので、基本は、20kまでフラットにしてみました。
低域の特性がほぼ一緒になりました。これは、入力インピーダンスを同じにすることで、カップリングコンデンサのハイパスの特性が一緒になったからだとおもいます。
超高域では、若干差がありますが、イコライザの誤差範囲で、許容範囲です。
まとめ
最初は、ノイズが気になったアンプですが、今は、全く聞こえず、アメリカのアンプとは思えない様な、落ち着いた音が流れてきます。
低域は、40Hz近辺のブーストがありますが、この近辺は、スピーカの減衰がかならずある領域で、力強く感じます。
高調波対策を施したのでSN比率も公称90dBが、計算上100dB以上になっていそうです。
ノイズを抑えた、アメリカサウンドのアンプをお探しの方に、おすすめの一台になったと思います。
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いかがでしたでしょうか。オリジナル性を重視した、ピアニシモ仕様、とても魅力的ではないでしょうか。一度聞いてみたいと思われたなら嬉しいです。
もし、同じ様にカスタムをしてみたいと思われたらプロフィールのメアドまでご連絡お願いします。
これまでのPA-304のメンテナンスは、下記よりご覧になれます。
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カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。