友人よりピュアアナログオーディオメーカで名高いAccuphaseのプリアンプC-280の修理ご相談がありました。
どうも素子からの液漏れにより、基板にダメージがるとのこと。
メーカの修理依頼を断れれてしまい、がっかりされているご様子。
恐る恐る中を開けて原因を調査始めました。
さて、液漏れ修理は何度も対応しておりますが、そのハイエンド機種の性能を復活させることができるでしょうか。
はじめに
このプリアンプは、18kgの重量を誇り、完全左右セパレートアンプ構造。
簡単にスペックをまとめてみました。
特筆すべきは、Outputのレベルが10V。カーオーディオのハイレベルでも4Vて移動ですが、10Vとは驚きです。
外観
木製キャビネットに包まれた重厚なボディ
ボリュームつまみは、無垢のアルミ材の削り出しが使われています。
上からは、電源や、各アンプのユニットでしょうか。ブロックが見えます。
背面は、バランス出力のコネクタが見えます
電源ケーブルの引き出しも、防水ブッシュでしょうか、強靭な構造です。
悲しいことに修理不可能のラベルが貼られてしまっています。なんとか剥がしたいです。
キャビネットから取り出すと、
大きな電源回路、ブロックコンデンサそれに、各部のアンプユニットが現れます。
故障状態
故障しているとのことですが、確認してみると。
- Phoneのインピーダンス切り替えができない
- 音が出ない
状態でした。
とにかく、液漏れの箇所を見てみましょう。
メンテナンス
早速、分解を始めました。
フロントの部分のカバーを外すと、
確かに液漏れらしい箇所が見えます。
フラットケーブルにも、腐食らしい痕跡があります。
マザー基板状態
マザーボードからフラットケーブルを外し、洗浄、研磨を施すと
配線が溶けて3箇所ほど、切れていました。
また、基板の上下をつなぐスルホールも溶けて、繋がっていないことがわかりました。
これは、ハトメ処理で接続して、修理しました。
基板修復
切れた配線は、細い錫メッキ線をパターンに沿って加工し、半田
その後レジストして、念のためカプトンテープで保護します。
液漏れ素子
ところで、液漏れは、隣の電解コンデンサに見えますが実は、機能切り替え基板の電池からもれていました。
当時のバックアップとして、ニッカド電池を基板に装着していますが、これから液漏れが発生しています。
基板から、電池を取り外します。
はずしてみると、基板の銅箔PAD(座)が溶けて無くなっています。
これも同じ様に、ハトメ修繕して、部品を交換します。
残念ながら、ニッカドのこのタイプの電池は入手が難しいのと、また同じ様に液漏れを起こす可能性があります。
今回、バックアップに適した、電気二重コンデンサに交換しました。
電気二重コンデンサなので定電流の充電が適していますが、オリジナルのニッカド受電で対応できるか、計算してみました。
概ね2時間でフル充電できますし、バックアップ時間の減少も実用上問題なさそうです。
1st 動作確認
さて、配線も直ったので、動作確認をしてみると、Phoneのインピーダンス切り替えはもんだいなくできたのですが、どうも、歪っぽい。。。
アッテネータのつまみに手を掛けると、音量が変わってしまいます。
それに-20dBより-30dBの方が音が大きい....
アッテネータSWメンテナンス
アッテネータのスイッチは、別基板になっており、簡単に取りはずしできました。
早速中を確認してみると。
接点が露出しているので、黒くなっているのがわかります。
接触基板を取り外して確認してみることに。
接触子が黒くなっているのがわかります。
優しく磨いて、
接点グリスを塗布しました。
ソース切り替えSW、DISCレベル切り替えSW
このプリアンプには、同じ様な切り替えスイッチが、ソースの切り替えと、DISC(Phone)のレベル切り替えに用いられています。
こちらも、確認したところ、酸化していましたので、取り外し
研磨、接点グリス塗布しました。
(接点グリスは、接点が空気にふれることを防ぎ、酸化を防ぎます。)
動作確認
さて、音は蘇ったでしょうか。
簡単に正弦波の微小レベルを確認してみました。
20mVレンジですが、いつも苦労している高調波ノイズ等は、全く見られません。
とても素晴らしい性能です。
ボリュームをフルにまわしてもノイズが聞こえてきません。
周波数特性(フラットアンプ)
最後に周波数特性を確認。
100kHzでも-0.5dBでしょうか、測定誤差範囲の素晴らしい特性が現れました。
周波数特性(Phone)
Phoneの特性も確認してみました。
1kHzを0dBとして
きっちりと10Hzで;20dB、20kHzで-20dBとなっていることが確認できました。
左右の差も全くありません。
まとめ
今回、メーカの修理不能のハイエンドプリアンプ C-280をメンテナンスしてみました。
これまでの経験をもとに、修理ができ、本来の性能が発揮できていることも確認できました。
このプリアンプのノイズレベルの低さ、小ささには、びっくりです。
音もその大きさ、重量がもたらすのでしょうか、どこまでも静寂で、色付けのない大人の音。ホームオーディオでゆっくり音楽を奏でてくれます。
いつか、このプリアンプを我が家にも迎え入れることができることを夢見るばかりです。
もし、同じ様にC-280の故障で、メーカから修理を断れれてしまい、困られている方、ご相談ください。同じ状態ですと、修理可能の可能性があり、ご協力できるかもしれません。
せっかくのC-280を、復活させることにご助力できると幸いです。
カスタムナカミチアンプ
オークションに当方が電源ノイズ極小カスタムしたアンプを出品していることがあります。数が少ないので、遭遇された場合は、お早めのご入札お願いします。
使用した測定器
使用した機器
DAC(D10)
測定用にはD10というDACを用いています。
現在は、後継機のD10Sがあります。
正弦波もとてもきれいです。
オシロスコープ(SDS1102)
使用している測定器は、SDS1102というデジタル・オシロスコープ。
廉価版(3万円以下)でオーディオの帯域では十分な能力を有しています。
FFTを駆使すれば、ノイズや、歪の傾向も見ることができます。
波形貼り付けもPCにUSBで可能です。
奥行きがとても薄いので、机の上に常備しています。