今回は、少し異色なアダプタを作ってみました。
ラインマトリックスです。
長岡鉄男氏考案のスピーカ・マトリックスは有名で、いろいろな結線があることが知られています。ライン端子でオペアンプでつくるのも良いのですが、パッシブで作れないかと考えました。また少し演算にゲインをつけて、効果を確認したくて作りました。
カーオーディオでは、なるべく電源が不要で、ノイズを拾わないようにとも考えてみました。
しくみ
スピーカマトリックス
スピーカマトリックスは有名で、説明も必要ないですね。
LとRの差分の音を利用するサラウンド方法です。
上記の例では、背面のLとRは、逆相の音になっており、同じ音が出てしまいます。
それでも、サラウンド効果が得られるのは、不思議です。
スピーカマトリックスの課題
スピーカマトリックスで、気になるのが差分をスピーカ端子でつくること。
カーオーディオでは、マニアでは、リアに別のアンプをつけることが一般的。
出力同士の接続は、電流のながれからも問題があり、以前から気になっていました。
とくにフィードバックのないアンプでは、正しく差分がでないのでは。
たとえばLが1VでRが2Vだったとすると、L-Rは-1Vなのですが、Lが2Vにつられて上がってしまいそうです。
現在、車カーオディオのリアは、リア専用のアンプでドライブして、スピーカの配線でマトリックスにしています。
マトリックスだけの音をきくと、どうも、おかしな音がするときがあります。
高域がシュワシュワ言う音がします。特にサンプリングが低い音楽を聞くと顕著です。
これが、アンプに起因する原因かどうかも確認するために、Lineレベルでマトリックス信号を生成して、アンプに入れて確認したいと思います。
ラインマトリックス
ラインマトリックスは、同じように、L-RとR-Lの信号を作ればよいのですが、Line信号そのものですと、逆相の信号は、OpAmp等が無いと作るのが難しいです。
パッシブでできるすればトランスが思いつきます。取り急ぎ、考えてみることに。
回路図
回路図は至って簡単です。
トランスから+と-が出力されるので、それを、抵抗でミックスすれば、LとRの配分が決められます。
このボリュームをMINにすると、ダイレクト出力
MAXにすると逆相のR/Lが反対側にでます。
中間で、通常のマトリックス状態になります。
でもトランスなので、周波数特性が...
モコモコの音になってしまうのでは...
それも確認するために、作ってみることに。
トランス選定
探してみると、トランジスタトランスというのがあって、それを使えばできそうです。
入力が、8K、出力が2K、巻線比が2:1ですので、-12dBぐらい減衰してしまいますが、アンプのGainでコントロールできる範囲でしょう。
制作
結線は、簡単なのですが、ケースが結構厄介。
金属のケースが良いのですが、GNDを分離して、バランス入力的に使いたいので、プラスチックのものを選びました。ノイズがでたらアルミ箔シールド等で、対応してもよいので。
一番大変なのは、ケースの加工でした。
トランスは、0.5mm厚の両面テープで仮固定して、うまく行ったら、樹脂で固めることに。
試聴
マトリックスを調整するのですが、今回は、取り急ぎ、マトリックスの音だけをきいてみました。
まず、ボリュームをMINにして、テスト。
音は、至って普通。音の劣化は、あまり感じられません。
減衰が12dBもあるので、その差も大きいですが。インピーダンスも下がりますので、その効果もあるのでしょうか。
マトリックス調整
音を聞きながら、ボリュームを調整してみると。
スピーカマトリックスと同じ様な音がでました。
それに、変な音、高域がシュワシュワ言う音は、全くしません。
音の広がり調整にも
ボリュームを調整してゆくと、急激にマトリックスエリアに突入します。
でも、なれてくると、調整によっては、広がりのある音になることがわかりました。
これは、場合によっては、机のミニスピーカと組み合わせて、中心の音を抑えて広がりのあるおとを楽しむのにも使えるかもしれません。
まとめ
今回は、室内で、実際にマトリックス演算がただしくできるかを確認してみまました。
ボリュームの調整がシビアであること以外、音も良好ですし、調整することで
効果はあり、実際の車載での確認は、後日、ご報告します。
うまくゆくといいのですが。
その後
車載での確認は、驚くほど良好です。スピーカ結線での違和感がなくなり、L-Rの差分が綺麗に出ています。比較的低サンプリングでもあまり違和感がありません。
微妙に調整できるのも面白いです。
後部座席に搭乗者がいる場合、通常の音にボリュームひとつで切り替えられるのも良いです。
簡単に取り付けられ、取り外しも簡単。
車でマトリックス配線されている方、オススメです。一度お試しを。
ご注意)
個人で楽しまれる方、本回路の使用、大歓迎です。でも、たくさん作られる方(いらっしゃらないと思いますが)、ご連絡、相談ください。コストダウンの方法等も合わせて、ご提案で切るかもしれませんので。
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