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オーディオと電源回路 ピアニシモを聞くために

PA-202 電源FET化の挑戦

ナカミチのカーオーディオアンプは、その優しい音質で現在も人気のあるアンプです。当方も、そのアンプを復活すべく、様々な手法で、メンテナンスやカスタマイズを行ってきました。

30年前は、まだトランジスタ全盛期で、FETはまだ製品に使われることが少なかった時代でした。

現在の電源は、効率の関係でFETでスイッチングするのが一般的になっています。

今回は、評価機のPA-202を、電源のスイッチング素子をトランジスタから、FETに置き換えに挑戦したいと思います。さて、うまくゆくでしょうか。

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 はじめに

現代のスイッチング電源は、FETにより高周波で小型化、高効率が当たり前です。ですが30年前では、FETもまだ一般的でなく、そのため高周波にはすることができませんでした。

今回、初回として、スイッチング素子をトランジスタからFETにすることに挑戦してみたいと思います。

 

初期状態

比較の左側は、別のPA-202標準状態です。右側は評価用の基板です。

この基板は、液漏れにより、基板にダメージが大きかったもので、電解液が、流れてしまった部品を全部取り外し、基板の銅箔を研磨することからはじめました。

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白くなっているのは、電解液により、脱色してしまった状態です。

外して、洗浄処理をおこないました。

基板パターン

基板のパターンは、腐食があるところを研磨します。

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腐食したハンダは、あとからはんだをはじいてしまいますので、これもきれいに剥がします。

これによりパターンの状態を確認することができます。

修正後

修正作業は、一日で終わるはずが、3日ほどかかってしまいました。

(オリジナルのナカミチお持ちの方、こんな状態になる前にぜひ、メンテナンスお願いします。)

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今回のFETの改装以外に

  • 電源コンデンサの交換
  • 電力用フィルタの交換(コアタイプ)
  • 高調波対策
  • OpAmpの電源強化
  • OpAmpのソケット化、OPA1622搭載、パスコン追加
  • Vr交換
  • カップリング交換(オリジナルの音継承すべく、無極性の大型MUSEへ)

を施しています。

電源

さて、電源部をFET化するには、そのまま載せ替えただけでは、動きません。

標準一次側回路

PA-202の一次側概略回路図を書いてみました。

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下側がメインのトランスの巻線ですが、上側の巻線は、トランジスタのスイッチングを安定するための補助で、PA-302は、さらに強力にするため、独立したトランスになっています。

PA-300やPA-350は、これらのトランスが無く、トランジスタのOnのスピードを積分回路にて遅くしています。)

FET化(Step1)

FET化を行うのに、このままでは、ベース(ゲート)の電圧が足らず、うまくスイッチングできません。そこで、元々の制御信号を用いてみることにしました。

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(改造は、パターンカットx2と、隣接ジャンパx2です)

なんとかスイッチングできましたが、電圧が3V等程度までした上がりません。

初段の分圧比は1/3程度ですが、トランジスタのベースに電流が流れ、3V程度に落ちています。

同じようにこの初段の制御用のトランジスタもFETにしてみます。

 

FET化(Step2)

初段もFET化することで、ゲート制御の電圧が単なる分圧比になるはずです。

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電圧が約4.5Vまで上昇し、FETのOn電圧を確保することができました。

スイッチング速度も早くなっています。

検証

さて、電源の状態は、どのように変化したでしょうか。

リップル等の変化を確認してみます。

一次側

変化がよく分かるように、高調波対策前でまず比較してみます。

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トランジスタタイプは、オンするときに、スパイクが現れ、FETは、オフのときに現れます。

FET回路は、全般的に制御系の電流が抑えられるので、制御信号も早いはずですが、スイッチング速度を加減するためのゲートへの挿入抵抗の抵抗値が大きいためかもしれません。

一次側(高調波対策後比較)

高調波対策は、いつもの大きめのチップセラコン処理です。

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立ち上がり、立ち下がりの違いはありますが、同等程度になっています。

電力電源比較

電力回路は、チョークコイルを交換していますので、厳密な比較では無いですが

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リップルは、コイルの交換の複合作用で、改善していると考えます。

電力電源比較(高調波対策後)

 高調波対策後は、ほとんど同じ特性になりました。

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電圧電源比較

同じように電圧の電源も比較ししてみます。

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FETの方がスパイクノイズがめだちます。やはりFETの方がスイッチングスピードが早い現れでしょうか。

電圧電源比較(高調波対策後)

さて、スイッチングのスパイクの変化が楽しみです。

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きれいに抑えられています。

このコンデンサは、チップタイプの大きめのコンデンサでの効力です。

リードタイプのセラミックや、小さなコンデンサでは、逆効果になりますので、同じように高調波対策を行う際には、やはり測定器と測定技術が必要になります。

電源効率

さて、効率は改善しているでしょうか。

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比較が難しいのですが、約1割程度良くなっていそうです。

まとめ

電源のFET化がだいぶ方向性が見えてきました。回路上ももう少し改善して、ゲートのスイッチングスピード制御抵抗の値も改善の余地があります。

しばらくは、この状態で、使ってみて、妥当性を確認してみたいと思います。

実は...

実際ターゲットは、このPA-202ではなく、PA-350です。

このモデルは、トランジスタのオフのタイミングで、反対側のトランジスタがオンしてしまう問題対策を施してあります。

その方式が、ベースの信号をゆっくりにする対策になっており、このままでは、耐久性と電源のゆとりが気になります。

これをFETに置き換えることで、元の設計思想の電源回路になり、効率改善ができ、電源にゆとりが生まれ、アンプ本来の能力を引き出すことができるのではないかと、考えています。

ぜひ、PA-350を設計どおりの能力を引き出して、ナカミチのファンへお届けしたいと考えています。どうぞ、お楽しみに。

  

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